9月29日、中外製薬株式会社は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるパージェタ(一般名:ペルツズマブ、以下パージェタ)とハーセプチン(一般名:トラスツズマブ、以下ハーセプチン)の配合皮下注製剤RG6264について、「HER2陽性乳がん」および「がん化学療法後に増悪したHER2陽性大腸がん」の治療薬として製造販売承認申請を行ったと発表した。
これまでの投与法として、パージェタとハーセプチンの静脈注射は、ハーセプチンを投与後にパージェタを投与し、所要時間は初回投与時約150分、2回目以降は60~150分であった。一方、RG6264を皮下注射する場合は、初回投与時は約8分、2回目以降は約5分と、投与時間が大幅に短縮する。これにより患者の利便性向上や医療現場における負担軽減が期待できる。
今回の承認申請は、国際共同第3相FeDeriCa試験ならびに海外第3相PHranceSCa試験の結果に基づくもの。FeDeriCa試験は、HER2陽性早期乳がん患者(N=500人)を対象に、術前および術後療法として化学療法+RG6264の薬物動態、有効性、安全性を化学療法+パージェタ+ハーセプチンの静脈注射と比較検証した臨床試験であり、日本の施設も参加した。同試験の結果、両群間における安全性は同等であった。
また、PHranceSCa試験は、HER2陽性早期乳がん患者を対象にRG6264に対する患者選好度と皮下投与の満足度を評価した臨床試験。同試験の結果、評価対象となった85%の患者(N=136/160人)が、パージェタおよびハーセプチンの静脈注射に対して皮下注製剤を好んだと報告している。
中外製薬の代表取締役社長CEOの奥田修氏は、「HER2陽性の乳がんの標準治療であるパージェタおよびハーセプチンの併用療法について、配合皮下注製剤が申請できたことを嬉しく思います」と述べている。
RG6264とは RG6264は、パージェタおよびハーセプチンに含まれるモノクローナル抗体とボルヒアルロニターゼアルファ(遺伝子組換え)の溶液を1本にまとめた配合皮下注製剤。固定用量による投与が可能である。ヒアルロン酸分解酵素であるヒアルロニターゼにより、抗体の浸透・吸収を促進すると考えられている。
パージェタ(一般名:ペルツズマブ)とは パージェタは、ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体。HER2は腫瘍細胞の増殖に関与している。ハーセプチンと併用することで、HERシグナル伝達系をより広範囲に遮断することが可能になる。パージェタは2013年に「HER2陽性の手術不能または再発乳がん」を対象に発売された。
ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)とは ハーセプチンは、HER2を標的とするヒト化モノクローナル抗体。2001年に「HER2過剰発現が確認された転移性乳がん」を対象に発売された。
参照元:中外製薬株式会社 ニュースリリース