ホルモン療法抵抗性のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカン、無増悪生存期間を延長Journal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2022.09.13
  • [最終更新日]2022.09.12
この記事の3つのポイント
ホルモン療法抵抗性のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・サシツズマブ ゴビテカンの有効性安全性化学療法と比較検証
無増悪生存期間は5.5ヶ月であり、化学療法群(4.0ヶ月)に対して統計学的有意に改善した

8月26日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてホルモン療法抵抗性のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対する抗Trop-2抗体薬物複合体ADC)であるsacituzumab govitecan(サシツズマブ ゴビテカン)の有効性、安全性を比較検証した第3相TROPiCS-02試験(NCT03901339)の結果がUniversity of California San Francisco Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏らにより公表された。

本試験は、ホルモン療法抵抗性のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対してサシツズマブ ゴビテカンを投与する群(N=272人)、もしくは主治医選択の化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を実施する群(N=271人)に無作為に振り分け、主要評価項目として盲検独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)を比較検証した国際多施設共同ランダム化の第3相試験である。

本試験が開始された背景として、ホルモン療法抵抗性のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がんに対して単剤の化学療法による治療がされるが、その予後は不良である。Trop-2は乳がんに多く発現するタンパク質であり、抗Trop-2抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカンは、臨床的効果のある可能性が示唆されている。以上の背景より、本試験が開始された。

本試験に登録された患者の年齢中央値は56歳。臓器転移率は95%。99%の患者がサイクリン依存性キナーゼ阻害薬CDK4/6阻害薬)の治療歴があり、前治療歴の中央値は3レジメンである。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。

主要評価項目である盲検独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値は、サシツズマブ ゴビテカン群の5.5ヶ月(95%信頼区間:4.2-7.0ヶ月)に対して主治医選択の化学療法群で4.0ヶ月(95%信頼区間:3.1-4.4ヶ月)を示し、サシツズマブ ゴビテカン群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを34%減少(HR:0.66、95%信頼区間:0.53-0.83、P=0.0003)し、主要評価項目を達成した。

6ヶ月無増悪生存率(PFS)はサシツズマブ ゴビテカン群の46%(95%信頼区間:39-53%)に対して主治医選択の化学療法群で30%(95%信頼区間:24-37%)、12ヶ月無増悪生存率(PFS)はサシツズマブ ゴビテカン群の21%(95%信頼区間:15-28%)に対して主治医選択の化学療法群で7%(95%信頼区間:3-14%)を示した。

全生存期間OS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン群の未到達に対して主治医選択の化学療法群で未到達であり、サシツズマブ ゴビテカン群で死亡(OS)のリスクを16%減少(HR:0.84、P=0.14)した。

一方、安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、好中球減少症がサシツズマブ ゴビテカン群の51%に対して主治医選択の化学療法群で38%、下痢がサシツズマブ ゴビテカン群の9%に対して主治医選択の化学療法群で1%であった。

以上の第3相試験の結果よりHope S. Rugo氏らは「ホルモン療法抵抗性のあるホルモン受容体陽性HER2陰性転移性乳がん患者に対する抗Trop-2抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカンは、主治医選択の化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。また、治療関連有害事象(TRAE)は管理可能な内容でした」と結論を述べている。

Sacituzumab Govitecan in Hormone Receptor–Positive/Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Negative Metastatic Breast Cancer(J Clin Oncol. 2022 Aug 26;JCO2201002. doi: 10.1200/JCO.22.01002.)

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