8月30日、大鵬薬品工業株式会社は、経口HSP(Heat Shock Protein)90阻害剤であるジェセリ錠40mg(一般名:ピミテスピブ、以下ジェセリ)について、「がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍(GIST)」を適応として販売を開始したと発表した。
GISTは、肉腫の一種で、消化管の壁に発生し転移や再発を起こす悪性腫瘍であり、希少がんである。胃や小腸での発生が多く、粘膜から発生する胃がんや大腸がんとは異なる性質を持つ。GISTの多くは、がんの増殖や生存に関与する遺伝子のKITやPDGFRA変異を有しており、これらの働きを阻害する分子標的薬が治療薬として承認されている。しかしながら、これらの承認薬で治療が終了したGISTに対しての治療薬の開発は依然として高いアンメット・メディカル・ニーズがある。
今回の販売に先駆け、大鵬薬品は第3相CHAPTER-GIST-301試験の結果に基づき、ジェセリの製造販売承認を2022年6月に取得していた。CHAPTER-GIST-301試験は、イマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブなどの標準治療薬に不応または不耐のGIST患者を対象に、ジェセリを投与する群とプラセボを投与する群に振り分け、ジェセリの有効性と安全性を比較検証した第3相臨床試験であり、日本人患者86名が登録された。
大鵬薬品はプレスリリースにて「アンメット・メディカル・ニーズの高いGISTに対して、本剤が患者さんや医療関係者に貢献できるよう、適正使用の推進に努めてまいります」と述べている。
HSP(Heat Shock Protein)90とは HSP90はがん細胞や腫瘍組織に多く発現しており、タンパク質の機能的構造の形成促進・維持を通じて細胞をストレスから守っている。そのため、ストレスが増えるとHSP90の発現量が増加し、活性の高い状態で存在する。がん細胞は、低酸素、低栄養、免疫系による排除、遺伝的不安定性といった多くのストレスにさらされているため、発現量が増え、がんの生存・維持に大きく関連している。ジェセリによりHSP90を阻害することで、がんの増殖や生存などに関与するKIT、PDGFRA、HER2やEGFRなどのタンパクを不安定化し、減少させることで抗腫瘍効果を示す。
参照元:大鵬薬品工業株式会社 ニュースリリース