8月8日、医学誌『nature medicine』にて脳転移のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体であるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン、DS-8201a、以下エンハーツ)の有効性、安全性を検証した第2相のTUXEDO-1試験(NCT04752059, EudraCT 2020-000981-41)の結果がMedical University of ViennaのRupert Bartsch氏らにより公表された。
TUXEDO-1試験は、未治療もしくは治療歴のある脳転移のあるHER2陽性転移性乳がん患者(N=15人)に対して3週を1サイクルとしてエンハーツ5.4mg/kg療法を実施し、主要評価項目としてIntracranial response rate(頭蓋内奏効率)を検証した第2相試験である。
本試験に登録された15人の患者の背景は下記の通りである。60%の患者が前治療による病勢進行後に脳転移を発症。性別は女性が14人、男性が1人。年齢中央値は69歳(30~76歳)。ECOG Performance Statusはスコア0が40%。12人の患者がホルモン受容体陽性。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
全患者群における主要評価項目であるIntracranial response rate(頭蓋内奏効率)は73.3%(N=11/15人、95%信頼区間:48.1–89.1%)を示し、その内訳は完全寛解率(CR)が13.3%(N=2人)、部分寛解率(PR)が60%(N=9人)、病勢安定(SD)が20%(N=3人)であった。その他評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は14ヶ月(95%信頼区間:11ヶ月~未到達)であった。
以上のTUXEDO-1試験の結果よりRupert Bartsch氏らは「脳転移のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ療法は高率なIntracranial response rate(頭蓋内奏効率)を示しました」と結論を述べている。
Trastuzumab deruxtecan in HER2-positive breast cancer with brain metastases: a single-arm, phase 2 trial(Nat Med. 2022 Aug 8. doi: 10.1038/s41591-022-01935-8.)