進行/再発の消化器神経内分泌がんに対する化学療法が標準治療として確立ー国立がん研究センターらー


  • [公開日]2022.08.29
  • [最終更新日]2022.08.29

8月24日、国立がん研究センター中央病院は、日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)の肝胆膵・胃がん・食道がんの3グループが合同で行った、進行/再発の消化器原発神経内分泌がん(NEC)患者を対象にエトポシド+シスプラチン併用療法(EP療法)とイリノテカン+シスプラチン併用療法(IP療法)の優越性を比較検証した第3相TOPIC-NEC試験TOPIC-NEC試験の結果を発表。同日記者会見が行われ、同センター中央病院肝胆膵内科医長でJCOG肝胆膵グループの森實千種氏が試験の概要ならびに結果を説明した。

TOPIC-NEC試験は、進行/再発の消化器原発神経内分泌がん(NEC)患者(N=170人)を対象に、3週を1サイクルとして1~3日目にエトポシド100mg/m2+1日目にシスプラチン80mg/m2併用療法を行う群と、4週を1サイクルとして1、8、15日目にイリノテカン60mg/m2+1日目にシスプラチン60mg/m2併用療法を行う群に振り分け、延命効果を比較した世界初のランダム化比較第3相試験である。


(画像は提供資料より)

同研究が行われた背景は、神経内分泌がん(NEC)の特徴にある。神経内分泌がん(NEC)は全身のさまざまな部位から発生する希少がんで、患者数が少ないことから臨床試験の実施が困難なため、効果的な治療法の確立が期待されている。また、増殖のスピードが速く、早期に転移や再発を引き起こしやすい点が小細胞肺がん(SCLC)と類似しているという。そのため臨床では、EP療法やIP療法といったSCLCの標準治療に準じた化学療法が選択されていが、これまでEP療法とIP療法における優越性を比較したことはなかった。そこで今回、JCOGの肝胆膵・胃がん・食道がんグループが合同で臨床試験を実施し、50施設170人の症例数を確保した比較検証が行われた。

今回登録された消化器原発神経内分泌がん(NEC)の内訳は、食道、胃、十二指腸、虫垂、結腸、直腸、胆のう、肝外胆管、ファーター膨大部、膵、肝などである。

最終解析の結果、全生存期間OS)はEP療法群で12.5ヶ月、IP療法群で10.9ヶ月を示し、両群間で有意差は認めなかった(HR:1.043、P=0.80)。この結果はより、どちらも標準治療として確立できるが、統計学的に同等であることを示したものではないと森實氏は付け加えた。また、原発巣や病理学的分類などによるサブグループ解析においても両群間で有意差は認めなかった。


(画像は提供資料より)

無増悪生存期間PFS中央値はEP療法群で5.6ヶ月、IP療法群で5.1ヶ月を示し、奏効割合はEP療法群で54.5%、IP療法群で52.5%と、いずれにおいても両群間の明らかな差は見られなかった。

一方の安全性として、グレード3以上の有害事象の発生率は、好中球減少がEP療法群で91.5%、IP療法群で53.7%、白血球減少がEP療法群で61.0%、IP療法群で30.5%、発熱性好中球減少がEP療法群で26.8%、IP療法群で12.2%であった。EP療法群における発熱性好中球減少に対しては、研究の途中よりG-CSF製剤の予防投与を行い、発生率は5.1%まで減少した。

同試験の結果を踏まえて、森實氏は「科学的根拠に基づいて、EP療法、IP療法ともに標準治療と位置付けることができ、臨床試験の実施に大きなハードルがある希少がんにおいて大変意義のある成果となりました」と述べるとともに、「希少がんだから仕方がないではなく、さらなる治療の向上を目指して次なる臨床試験が必要であると認識しています」と今後への意気込みを語った。

また、記者会見に登壇した特定非営利活動法人パンキャンジャパンの理事長である眞島喜幸氏は、同試験の結果の発表を踏まえ、「これからはファーストライン治療として医師も自信を持って選択し、使用できることに喜びを感じます」と話す一方、「短くなったとは言え、希少がんのドラッグラグはまだ2年ほどあり、海外のガイドラインに記載されていても、日本では使用できない治療法がある。それらの治療選択肢を日本の患者にも使用できるよう開発を進めて欲しい。膵がんでは免疫療法の開発も始まっているため、神経内分泌がん(NEC)に対する免疫療法も期待したいです」と締めくくった。

参照元:
国立がん研究センター プレスリリース

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