8月12日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて2レジメン以上の治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対する抗SLAMF7モノクローナル抗体薬であるエムプリシティ(一般名:エロツズマブ、以下エムプリシティ)+免疫調整薬(iMiDs)であるポマリスト(一般名:ポマリドミド、以下ポマリスト)+デキサメタゾン併用療法(EPd)の有効性、安全性を比較検証した第2相のELOQUENT-3試験(NCT02654132)の最終解析結果がNational and Kapodistrian University of Athens School of MedicineのMeletios A. Dimopoulos氏らにより公表された。
ELOQUENT-3試験は、2レジメン以上の治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者(N=117人)に対して28日を1サイクルとして1、8、15、22日目にエムプリシティ10mg/kg(1、2サイクル目、3サイクル目以降は1日目に20mg/kg)+1~21日目に1日1回ポマリスト4mg+週1回デキサメタゾン40mg(75歳以上の場合は20mg)併用療法を実施する群(EPd、N=60人)、もしくは28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回ポマリスト4mg+週1回デキサメタゾン40mg(75歳以上の場合は20mg)併用療法を実施する群(Pd、N=57人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同ランダム化オープンラベルの第2相試験である。
本試験が開始された背景として、過去10~15年の間、多発性骨髄腫の治療法の改善にも関わらず、5年全生存率(OS)は55.6%と予後不良である。多くの患者はプロテアソーム阻害薬、免疫調整薬(iMiDs)の治療により一時的に改善するものの、最終的には再発し、これら治療薬に抵抗性を持つようになる。以上の背景より、再発/難治性多発性骨髄腫に対する新規の治療法の開発が必要であり、新規薬剤である抗SLAMF7モノクローナル抗体薬エンプリシティを併用したEPd療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の少なくとも45ヶ月のフォローアップ後における死亡イベント(OS)は、EPd療法群で61.7%(N=37/60人)、Pd療法群で74.5%(N=41/57人)であった。全生存期間(OS)中央値は、EPd療法群の29.8ヶ月(95%信頼区間:22.9~45.7ヶ月)に対してPd療法群で17.4ヶ月(95%信頼区間:13.8~27.7ヶ月)と、EPd併用群で死亡(OS)のリスクを41%(HR:0.59、95%信頼区間:0.37~0.93、P=0.0217)減少した。一方の安全性として、本試験で新たに確認されたEPd療法群の有害事象(AE)はなく、既存の臨床試験と安全性プロファイルの内容は一致していた。
以上のELOQUENT-3試験の最終解析の結果よりMeletios A. Dimopoulos氏らは「複数治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対する抗SLAMF7モノクローナル抗体薬エムプリシティ+免疫調整薬(iMiDs)ポマリスト+デキサメタゾン併用療法は、ポマリスト+デキサメタゾン併用療法に比べて全生存期間(OS)を統計学有意に改善しました」と結論を述べている。
Elotuzumab Plus Pomalidomide and Dexamethasone for Relapsed/Refractory Multiple Myeloma: Final Overall Survival Analysis From the Randomized Phase II ELOQUENT-3 Trial(J Clin Oncol. 2022 Aug 12;JCO2102815. doi: 10.1200/JCO.21.02815.)