8月9日、第一三共株式会社は、EGFR遺伝子変異陽性の転移性非小細胞肺がん患者を対象に、二次治療としてのHER3に対する抗体薬物複合体(ADC)であるパトリツマブ デルクステカン(U3-1402/HER3-DXd)の有効性と安全性を検証する第3相臨床試験「HERTHENA-Lung02」について、最初の患者への投与を開始したと発表した。
肺がんは世界で2番目に多いがん腫であり、非小細胞肺がんは肺がんの80~85%を占める。そのうちEGFR遺伝子変異を有する患者は最大30%と言われている。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、EGFR遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がんの治療には、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が選択肢として確立されている。しかしながら、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療を受けた患者のほとんどが、最終的にはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性を獲得するため、新たな治療選択肢が望まれている。
HERTHENA-Lung02試験は、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療後に病勢進行したEGFR遺伝子変異陽性の転移性非小細胞肺がん患者を対象に、パトリツマブ デルクステカンを投与し、有効性と安全性をプラチナ製剤と比較検証するグローバル第3相試験。日本を含むアジア、欧州、北米、オセアニアで実施し、約560名の患者を登録する予定であるという。
有効性は、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、臨床的有効率、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)を評価する。
第一三共はリリースにて、「EGFR遺伝子変異を有する転移性非小細胞肺がん患者さんに新しい治療の選択肢を提供できるよう、本剤の開発を加速させてまいります」と述べている。
HER3とは HER3は、非小細胞肺がんの83%に発現しているEGFRファミリーのチロシンキナーゼ受容体である。がん細胞の増殖と生存率の低下に関連していると考えられている。現在非小細胞肺がんのみでなく、あらゆるがん腫においても、HER3を標的とした既承認薬は存在しない。
抗体薬物複合体(ADC)とは 抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤。がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接伝達する。薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高める。
参照元:第一三共株式会社 プレスリリース