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2cm以上の早期大腸がんに対する内視鏡治療(ESD)、手術時間の短縮と良好な治療成績を確認

[公開日] 2022.08.10[最終更新日] 2022.08.10

8月5日、国立がん研究センターは、転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんに対して、高周波ナイフで切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した前向きコホート研究(CREATE-J study)の結果を発表した。この研究は、同センターとNTT東日本関東病院などの研究チームが共同で実施し、結果は国際的学術誌「Gastroenterology」で公表された。

転移のリスクが少ない2cm以上の早期大腸がんに対する従来の治療法は、腸管を切除する外科手術と内視鏡的粘膜切除術(EMR)がある。外科手術は病変を取り残しなく切除できるが患者の負担が大きく、術後のQOLが低下するというデメリットがある。一方、EMRは、短時間での治療が可能であり患者への負担は少ないといわれているが、処置に用いる輪状の細いワイヤー(スネア)の直径を超える2cm以上の病変に対しては、一度で切除することが困難であり、分割して切り取られるために取り残しが生じ、再発のリスクが残るという課題があるという。

(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

ESDは、高周波ナイフを用いて病変を一括切除する治療法。国立がん研究センターによって高周波ナイフ(ITナイフ)や手技が開発、確立されたという。高度な技術が求められるが、外科手術と比較して患者の負担が少なく、EMRと比較して根治性が高いのが特徴である。大腸がんでは2012年4月に保険適応となっていたが、治療効果や安全性の研究報告はあるものの、より大規模かつ長期的な報告が待たれていた。

(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

今回の前向きコホート研究では、早期大腸がんに対してESDを施行した患者(N=1883人、1965病変)を対象に、主要評価項目として5年全生存率、疾患特異的生存率、腸管温存率、副次評価項目として5年局所再発率、一括切除割合(病変を分割せず切除した割合)、治癒切除割合(病理学的に追加手術が必要ないと判断された割合)と安全性を評価した。なお、20施設が同研究に参加した。

短期観察の結果、一括切除割合は97%を示し、病理学的に追加手術が必要ないと判断された割合(治癒切除)は91%であった。また、平均治療時間は82分であった。一方安全性として、確認された有害事象は穿孔(腸に穴が開く)が2.9%、術後出血が2.6%であった。0.5%の患者で穿孔、出血に伴う外科手術が施行されたが、多くの症例で腸管を切除しない保存的加療での対処が可能であった。この結果は、2010年に発表された以前の研究と比較して、治療時間の短縮、治療成績の向上を示したという。

(画像は会見スライド資料より)

また、長期観察の結果、5年全生存率は93.6%(治癒切除群94.2%、再発リスクのある非治癒切除群88.6%)、疾患特異的生存率は99.6%(治癒切除群100%、非治癒切除群96.6%)、腸管温存率は88.6%、治癒切除が得られた場合の腸管温存率は98.1%を示した。治癒切除後の局所再発率は0.5%(N=8人)であったが、全症例とも内視鏡による追加治療が可能であった。異時性大腸がんは1%(N=15人)で発生し、手術が施行されたのは13例であった。

(画像は会見スライド資料より) (画像は会見スライド資料より) (画像は会見スライド資料より)

今回の研究結果について、記者会見を行った国立がん研究センター内視鏡科検診センター長の小林望氏は、「2cm以上の早期大腸がんに対してESDを行うことは、短期的にも長期的にも予後良好でした。また、異時性大腸がんによって手術を要した症例があったため、定期的な経過観察は重要だと示されました」と述べ、「ESDは世界的な標準治療になり、患者数の多い大腸がんのさらなる生存率の向上と術後患者のQOL維持に大きく貢献することが期待されます」と展望を語った。一方、大腸ESDによる治療の恩恵を受けるためには早期発見が重要であることから、積極的な大腸がん検診の受診の必要性も併せて強調した。

大腸がんとは 大腸がんは国内における罹患者数が男女ともに第2位、死亡者数は女性においては第1位と対策が求められる一方、I~III期の早期大腸がんでは比較的根治を目指すことが可能ながん腫である。

参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
ニュース 大腸がん ESD

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