子宮頸部上皮内腫瘍に対する光線力学的療法の臨床試験実施へ、クラウドファンディングを開始ー関西医科大学ー


  • [公開日]2022.07.08
  • [最終更新日]2022.07.07

6月28日、関西医科大学は、「子宮頸がんの前がん状態を光で治療する未来へ」というプロジェクト名で、子宮頸がんに先立って発生する前がん状態の新規治療法開発を目指す臨床試験の実施に向けた資金獲得を目的として、クラウドファンディングを実施すると発表。同大産科学・婦人科学講座の北正人診療教授が7月5日に記者会見に登壇した。

子宮頸がんは、日本において年間約1万人の女性が新たに罹患するがんであり、現在の対策としてはヒトパピローマウイルスHPV)のワクチン接種があげられる。しかし、HPVワクチンの接種は集団接種が開始された2013年に2ヶ月間のみ積極的に勧奨されたものの、その後は2022年4月まで勧奨が差し控えられていた。子宮頸がんの前がん状態(CIN)や子宮頸がんの罹患率は上昇しており、HPVワクチン以外の対策も含めて、多方面からのアプローチが必要と考えられている。

子宮がんの対策としては、HPVワクチンによる予防と検診による早期発見、そしてがんが発見された場合は至急表面を手術で取り除き子宮温存を目的とする円錐切除がある。しかし、HPVワクチンはHPVに感染している患者において、CINから子宮頸がんへの進行を食い止める効果はなく、円錐切除では、手術時の取り残しや追加治療、再発による追加切除や子宮摘出が行われる可能性があり、切除後は早産率の上昇と不妊症などの課題がある。

今回の臨床試験は、がん細胞に集積され光に反応することで抗腫瘍効果をもたらす薬剤「5-アミノレブリン酸」と、特異的な光の照射を組み合わせてがん細胞の死滅を誘導する光線力学的療法(PDT)の技術を用いた治療法の開発のために行われる。

この治療法では、子宮頸がんの前段階である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)をPDTの技術を用いて治療することで、子宮頸がんへの移行を予防するという。しかし、企業の協力が得られず計画が進行していないことから、今回クラウドファンディングで寄付を募ることとしたという。

これまでのPDTでは光の照射が難しく、患者や医師の負担があった。そこで今回の研究に先立ち、シリコン製の膣内アプリケーターを開発。これにより、PDTを受ける患者は器具挿入をする際の痛みや姿勢の負担が軽減されるとともに治療が日帰りで受けられるようになることが期待される。


(画像は記者会見時配布資料より)

クラウドファンディングの目標金額は1000万円。資金使途は、京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構(iACT)臨床試験橋渡しプログラム経費が500万円、医薬品医療機器総合機構(PMDA)戦略相談対策費が335万円、クラウドファンディング手数料が165万円となっている。

北診療教授は、「この治療法を、日本をはじめとするワクチン接種が進んでいない国へ、ワクチン接種の機会を逸してしまった患者さんへ、前がん状態と診断されたが治療方法に悩んでいる患者さんへ、一刻でも早くお届けするために、我々はクラウドファンディングを行うことにいたしました」と経緯を述べるとともに、「本プロジェクトでいただくご寄付をもとに、近いゴールとしては国からの公的資金の獲得を目指しています。それ以降は、数年間にわたる非臨床試験、臨床試験を経て、実際の医療現場で活用していただくための検証を進めてまいります」と今後展望を語っている。

5-アミノレブリン酸とは
5-アミノレブリン酸は、ヒトの体内で合成されるアミノ酸の1つ。通常、体内ではミトコンドリア内で生成されるが、体外から投与されると、細胞質に取り込まれてからミトコンドリア内に取り込まれ、プロトポルフィンIX(PPIX)が合成される。医薬品としても用いられており、日本では内服してがんを発行させ診断する光線力学的診断(PDD)として使用され、海外ではPDTとして臨床応用されている。


(画像は記者会見時配布資料より)


(画像は記者会見時配布資料より)

参照元:
関西医科大学 プレスリリース

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