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血液がんにおける遺伝子パネル検査の有用性を前向きコホート研究で確認ー国立がん研究センターらー


  • [公開日]2022.07.07
  • [最終更新日]2022.07.07

国立がん研究センターは、造血器腫瘍血液がん)を対象に、大塚製薬株式会社らと共同開発した遺伝パネル検査に関する前向きコホート研究を行い、その有用性を確認したと発表した。

血液がんの診断・分類には、がん細胞の形態をはじめ、がん細胞の有するタンパクや遺伝子異常などの情報が用いられる。次世代シーケンサーが登場し、血液がんの発症や病態に遺伝子異常が非常に大きく関わっていることが確認されており、実臨床においてもゲノム検査は、血液がんの診断や、予後予測などに重要かつ必須の検査となりつつある。

血液がんの中でも急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群MDS)では、生殖細胞系の遺伝子(RUNX1やDDX41)の異常が発症に関与し、生殖細胞系列のゲノム検査の必要性も明らかになっている。他にも免疫グロブリン遺伝子(IGI)に関連した遺伝子構造の異常(IGH/BCL2など)は、特定の病型において特徴的であり、診断や予後に影響を与える。さらに、血液がんに特徴的な融合遺伝子もこれまでに多数報告されており、特に白血病の診断や予後に関連する。しかし、これらの遺伝子異常に対する検査は限局的であり、血液がん領域においても網羅的に遺伝子異常を調べることができる検査法の確立が期待されている。

そこで、国立がん研究センターの研究チームは大塚製薬、京都大学医学院医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司教授らと共同で遺伝子パネル検査を開発。実臨床での有用性を評価する前向きコホート研究を実施した。なお、この血液がん遺伝子パネル検査は、血液がんで繰り返し遺伝子異常が起きていることが報告されている452遺伝子の変異・融合遺伝子/構造異常・コピー数異常からなる体細胞異常および生殖細胞系列異常を網羅的に解析することが可能だという。

今回の前向きコホート研究には、急性骨髄性白血病(N=22人)、骨髄異形成症候群(N=6人)をはじめとする176人から採取した骨髄液や末梢血といった生細胞、ホルマリン固定パラフィン包埋検体など計188検体の解析を行った。


(画像はリリースより)

その結果、97%の患者で1つ以上の遺伝子変異が検出され、検出された遺伝子変異の中央値は7つであった。また、血液がんで認められる頻度の高い異常の検出力は、既存の遺伝子パネル検査と同等以上の性能が確認された。生殖細胞系列の遺伝子異常は3%(N=6人)で検出され、5人はBRCA1/2、1人は遺伝性血液がんに関連するDDX41が検出された。


(画像はリリースより)

さらに同パネル検査の臨床における有用性を評価した結果、診断に結び付く遺伝子異常が82%、治療法選択に結び付く遺伝子異常が49%、予後予測に有用な遺伝子異常が58%の患者で検出され、特に診断、次いで予後予測に有用であることが確認された。

また、急性骨髄性白血病(AML)では、発症時の染色体異常や遺伝子異常によって同種移植の適応が決定がされるが、同遺伝子パネル検査により、約1/3の患者でリスク分類の変更がなされた。これにより、適切な治療に結び付く可能性が示唆されたという。さらに、これまで診断が困難であったフィラデルフィア染色体様急性リンパ性白血病(ALL)においても、原因となる融合遺伝子の検出が可能であり、治療標的の特定も期待される。

なお、今回の解析では、免疫グロブリン遺伝子(IGH)再構成やまれな融合遺伝子の検出も可能であることが示されたほか、それぞれの疾患でドライバー遺伝子がこれまでの報告と同等の頻度で検出され、同遺伝子パネル検査が血液がん全般に対応していることが確認されたという。

先行する固形がんでの遺伝子パネル検査では、組織検体の違いがプロファイリング結果に及ぼす影響が課題となっている。検体量が足りず変異が検出できない、または検査結果が参考値となる可能性、DNAとRNAでどちらを優先するのかとの質問に対し、国立がん研究センター研究所分子腫瘍学分野の分野長である片岡圭亮氏は記者会見で、「検体量については、血液や骨髄液といった生検体をであれば必要量は2ml程度であり、かつ高率に解析できていたため、変異を検出できないことは少ないだろう。一方、FFPE(病理標本)の時は検体量によってはRNAの解析が難しかった。今回の研究では、診断薬へ結び付けることと予後予測の2つの目的を同時にかつ最大限叶えるため、DNAとRNAの検査ではDNAの検査を優先して解析を行った」と述べるととに、「固形がんでは治療薬の選択が必要だが、新しい治療薬を探すという目的のみでなく予後予測、移植適応を考えることが重要」と固形がんとの違いから初発の患者が対象となる部分を強調して説明を行っていた。

また、同センター中央病院血液腫瘍科科長の伊豆津宏二氏は「診療にあわせた形で実用化が理想的であるが、生殖細胞系の異常が見つかることもあるため、遺伝カウンセリングなどの整備も今後されてくることを期待したい」と話していた。

なお、共同開発を行った大塚製薬は現在、同パネル検査の承認申請の準備を行っている。

参照元:
国立がん研究センター プレスリリース

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