6月14日、第一三共株式会社は、TROP2に対する抗体薬物複合体(ADC)であるダトポタマブ デルクステカン(DS-1062/Dato-DXd)について、手術不能な転移性または局所再発性トリプルネガティブ乳がん患者への一次治療を評価する第3相TROPION-Breast02試験において最初の患者に投与を行ったと発表した。
トリプルネガティブ乳がんは乳がん全体の約10~15%を占めており、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の3つが陰性のもの。複数の固形がんに高発現するたんぱく質の一つであるTROP2は、がんの進行や生存率低下に影響があると言われており、トリプルネガティブ乳がんの約80%に発現している。トリプルネガティブ乳がんは他の乳がんと比較すると初回の化学療法後に再発の可能性が高いと言われている。
TROPION-Breast02試験は、免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない、手術不能な転移性または局所再発性トリプルネガティブ乳がん患者を対象に、一次治療としてのダトポタマブ デルクステカン単剤療法の有効性と安全性を治験医師選択の化学療法と比較検証するグローバルの第3相試験。登録予定患者数は、日本をはじめ、アジア、アフリカ、欧州、北米において約600名である。
同試験の主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)。副次評価項目は客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)や安全性などである。</p.
第一三共はリリースにて「トリプルネガティブ乳がん患者さんに新しい治療の選択肢を提供できるよう、本剤の開発を加速させてまいります」と述べている。
なお、ダトポタマブ デルクステカンはアストラゼネカ社と共同で開発を行っている。
ダトポタマブ デルクステカンとは ダトポタマブ デルクステカンは、がん細胞の細胞膜上に高発現するTROP2に選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体にトポイソメラーゼ1阻害薬(DXd)を結合させた薬剤。1つの抗体につき約4個のDXdが結合している。薬物をがん細胞内に直接伝達することで薬物の全身曝露を抑制するように作られている。
抗体薬物複合体(ADC)とは 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と低分子化合物(薬剤)をリンカーを介して結合させた薬剤。がん細胞に発現している標的抗原に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届ける。それにより薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高める。
参照元:第一三共株式会社 プレスリリース