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HER2陽性再発進行の骨軟部肉腫と婦人科悪性腫瘍を対象に非ウイルス遺伝子改変HER2 CAR-T細胞療法の医師主導治験を開始ー信州大学医学部附属病院ー


  • [公開日]2022.05.13
  • [最終更新日]2022.05.23

信州大学は5月9日、再発/進行性のHER2陽性骨・軟部肉腫ならびに婦人科悪性腫瘍の患者を対象にHER2を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の安全性を評価する第1相医師主導治験を開始すると発表した。

今回の医師主導治験は同大医学部小児医学教室の中沢洋三教授と学術研究・産学官連携推進機構遺伝子・細胞治療センターの柳生茂希教授らの研究グループによるもの。用いられるHER2 CAR-T細胞は、信州大学と共同研究開発契約を締結しているブライトパス・バイオ株式会社と共同で開発されたものである。

CAR-T細胞は、がん細胞の上に発現している標的の抗原と特異的に結合する領域と、T細胞に活性化シグナルを伝達する領域を持つT細胞受容体を遺伝子改変技術を用いて発現させたもの。がん患者の血液からCAR-T細胞を作成し、患者の体内に戻すのが一般的な治療法であり、現在国内で承認を取得している血液腫瘍を対象とする4種類のCAR-T細胞は、ウイルスベクターを用いた製法(ウイルス法)で製造されている。

一方、今回開発されたCAR-T細胞はPiggyBac法という手法で非ウイルスベクターを用いて生成されたものであり、文化早期の増殖能が高く、「免疫疲弊」が生じていない幹細胞様メモリーT細胞が多く含まれているため、効果の持続性が高いという特徴を持つ。中沢教授と柳生教授らは、これまでヒト細胞や動物実験において、非ウイルス法で生成されたCAR-T細胞が固形腫瘍に対しても有効であることを証明してきた。

今回の第1相医師主導治験は、標準治療が不応・不耐もしくは標準治療後に再発・進行した難治性骨・軟部肉腫および婦人科悪性腫瘍患者最大12名を対象に非ウイルス遺伝子改変自家HER2 CAR-T細胞(BP2301)を投与し、安全性を評価する。治験実施施設は信州大学病院のみであり、小児科、産婦人科、整形外科で投与される。HER2 CAR-T細胞(BP2301)の製造ならびに品質試験も信州大学病院で実施する予定である。

同治験でHER2 CAR-T細胞の安全性が確認されれば、日本で初めての固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の可能性が広がる。研究グループはプレスリリースにて「本医師主導治験で HER2 CAR-T 細胞の安全性が確認され、有効性も期待できる場合は、1日でも早く1人でも多くの患者さんに届けられるように、企業治験へ橋渡し、薬事承認を目指します。また、独自に開発した本製品の非ウイルスベクター製法は、簡便かつ低コストで高性能な製品製造が可能となるため、産学官連携を通じてわが国の新しい医療産業振興に貢献できると考えています」と述べている。

HER2とは
HER2は細胞の増殖、分化、生存、代謝などに関わる受容体型チロシンキナーゼの1つであり、多くの固形がんにおいて発現が認められる。発現頻度はがん腫によってさまざまである。今回の治験のがん腫については、骨・軟部肉腫で16~60%、婦人科悪性腫瘍では子宮体がんの18~80%、子宮頸がんの21%、卵巣がんの27%にHER2が発現している。乳がんと胃がんにおいてはHER2を高発現する患者に対しては、標準治療に用いられる複数の抗体薬が薬事承認されているが、これらの抗体薬はHER2低発現がんに対しては効果が不十分であり、またほかのがん腫においては抗体薬の適応はない。

参照元:
信州大学医学部付属病院 プレスリリース

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