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再発リスクの高い頭頸部がんに対する術後補助療法、シスプラチン毎週投与+放射線治療が新たな標準療法に

[公開日] 2022.03.04[最終更新日] 2022.03.04

目次

JCOG頭頸部がんグループによるランダム化比較第2/3相試験

3月2日、国立がん研究センターは、術後再発リスクの高い頭頸部がん患者を対象に実施したシスプラチン毎週投与+放射線治療について、標準治療であるシスプラチン3週毎+放射線治療に対して非劣性を示し、有害事象の発現頻度が低いことをランダム化比較第2/3相試験(JCOG1008)で確認したと発表した。

この研究成果は、同センター中央病院が中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の頭頸部がんグループによるもの。試験の結果は医学誌『Journal of Clinical Oncology』に2022年3月2日付で掲載された。

副作用により選択されにくい化学放射線療法

頭頸部がんの90%以上は扁平上皮がんであり、ステージ3/4の切除可能な局所進行頭頸部扁平上皮がんでは、術後に放射線治療を行っても局所再発や遠隔転移の頻度が高く、5年生存率は40%と、予後不良ながん腫である。

現在、術後再発リスクの高い頭頸部がん患者に対する術後補助療法の標準治療は、シスプラチン100mg/m2を3週間ごとに3コースと放射線治療を同時併用する化学放射線療法(シスプラチン3週毎+放射線治療)である。しかし、この化学放射線療法は、吐き気や腎機能障害などの副作用が強いため、投与量を減らすなど指示通りに治療を計画することが難しいことや長期の入院が必要であること、手術部位の感染リスクが高まるなどの理由から普及は進んでいなかった。

そのため実臨床においては、術後補助化学療法単独、術後放射線治療単独などの治療が頻用されており、また化学放射線治療を行う場合も副作用の軽減を期待してシスプラチンを30~40mg/m2に減量し、毎週投与+放射線治療を実施することも多かったという。しかし、シスプラチン毎週投与+放射線治療は、標準治療との比較試験が行われておらず、同等の治療効果を示すかどうかは不明であり、実臨床で選択されることが問題となっていたため、比較試験を実施するに至ったという。

第2相試験で安全性を検証後、第3相試験を実施

今回、JCOGの頭頸部がんグループは、術後再発リスク因子を有する頭頸部扁平上皮がん患者を対象に、シスプラチン3週毎+放射線治療とシスプラチン毎週投与+放射線治療の非劣性を検証する第2/3相試験を実施。参加施設は、国内で代表的な頭頸部がんの専門施設を中心に選定したものの、両群ともに施設での実施経験が少なく、実施可能性・安全性の情報が十分ではないと判断され、第2相試験で両群の治療の安全性を検証後、第3相試験を行ったという。

対象患者は、年齢が20~75歳、口腔・中咽頭・下咽頭・喉頭のいずれかに原発巣を有する頭頸部扁平上皮がん、術後診断ステージIII/IVA/IVB、切除断端陽性もしくはリンパ節外浸潤の術後再発高リスク因子を有する、遠隔転移を有さない、ECOG PS0-1、放射線治療、抗がん剤、ホルモン療法いずれの治療歴がないなどの規準に基づき、組み入れを行った。

第2相試験では、上記基準の患者(N=66人)をシスプラチン3週毎+放射線治療(N=33人)とシスプラチン毎週投与+放射線治療(N=33人)に1:1で割りつけ治療完遂割合を評価。その結果、試験の継続が認められ、第3相試験に移行した。第3相試験では、登録患者261人をシスプラチン3週毎+放射線治療(N=132人)とシスプラチン毎週投与+放射線治療(N=129人)に割りつけ、主要評価項目を全生存期間(OS)とした。

3年生存割合で非劣性を示すとともに、有害事象の発現頻度も低率に

第3相試験のフォローアップ期間中央値2.2年における2回目の中間解析の結果、3年生存割合はシスプラチン3週毎+放射線治療の59.1%に対してシスプラチン毎週投与+放射線治療で71.6%と、シスプラチン毎週投与+放射線治療が良好な傾向を示し、全生存期間(OS)の非劣性を証明した。

一方、安全性として、グレード3以上の好中球減少症はシスプラチン3週毎投与+放射線治療の48.8%に対してシスプラチン毎週投与+放射線治療で35.3%、グレード2以上のクレアチニン上昇は8.5%に対して5.7%、グレード2以上の難聴は7.8%に対して2.5%、グレード2以上の結膜炎は55.0%に対して50.0%とそれぞれ低率であることが示された。

外来での実施も可能と期待

シスプラチン3週毎+放射線治療に対して、シスプラチン毎週投与+放射線治療が非劣性を示したのは、今回の研究が世界初であるという。プレスリリースでは、今後の展望として、「本試験の結果、シスプラチン毎週投与+放射線治療が標準治療であることがガイドラインに記載され、新たな標準治療となることから、今後患者さんに対してより安全で、エビデンスに基づいた治療を提供することが可能となります。また、シスプラチン毎週投与+放射線治療は、副作用が軽く、外来でも実施可能であることから、今まで術後補助療法を避けてきた患者さんに対しても術後補助療法が適切に実施されるようになり、頭頸部がん患者さん全体の予後改善が期待されます。」と述べられている。

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)とは 国立がん研究センター中央病院が中央支援機構を担っている他施設共同臨床研究グループ。新しい治療法の開発や検証的試験を通じて、第一選択として推奨すべき標準治療や最善の医療を科学的根拠に基づいて確立することを目的に研究活動をおこなっている。各種がんの治癒率向上とがん治療の質の向上を図ることを目標に掲げている。

参照元:
国立がん研究センター プレスリリース
ニュース 頭頸部がん jRCTs031180135

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