治療歴のあるHER2陽性の進行非小細胞肺がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ単剤療法、客観的奏効率55%を示すThe New England Journal of Medicineより


  • [公開日]2022.02.15
  • [最終更新日]2022.02.09
この記事の3つのポイント
・治療歴のあるHER2陽性の進行非小細胞肺がん患者が対象の第2相試験
エンハーツ単剤療法の有効性安全性を検証
・客観的奏効率は55%を示す

2022年1月20日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて治療歴のあるHER2陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ(DS-8201、一般名;トラスツズマブ デルクステカン、以下エンハーツ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のDESTINY-Lung01試験(NCT03505710)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのBob T. Li氏らにより公表された。

DESTINY-Lung01試験は、治療歴のあるHER2陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者(N=91人)に対して3週を1サイクルとしてエンハーツ6.4mg/kg単剤療法を実施し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、病勢コントロール率DCR)、無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)を検証した国際多施設共同オープンラベルの第2相試験である。

本試験が開始された背景として、HER2陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の効果効能で抗HER2抗体は現在のところ承認されていない。以上の背景より、HER2陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験のフォローアップ期間中央値13.1ヶ月時点における結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は55%(95%信頼区間:44-65%)を示した。副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は9.3ヶ月(95%信頼区間:5.7-14.7ヶ月)、無増悪生存期間(PFS)中央値は8.2ヶ月(95%信頼区間:6.0-11.9ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は17.8ヶ月(95%信頼区間:13.8-22.1ヶ月)を示した。

一方の安全性として、既存の臨床試験で確認されているエンハーツの安全性プロファイルは一致していた。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は46%を示し、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症が19%だった。薬剤起因性の間質性肺炎は26%の患者で確認され、2人の死亡が確認されている。

以上のDESTINY-Lung01試験の結果よりBob T. Li氏は「治療歴のあるHER2陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ単剤療法は持続的で良好な抗腫瘍効果を示しました。一方、安全性も既存の臨床試験で確認されている内容と一致していました」と結論を述べている。

Trastuzumab Deruxtecan in HER2-Mutant Non–Small-Cell Lung Cancer(N Engl J Med. 2022 Jan 20;386(3):241-251. doi: 10.1056/NEJMoa2112431. Epub 2021 Sep 18.)

×

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン