2022年1月24日、医学誌『The Lancet Oncology』にてHER2陽性乳がん患者に対する経口チロシンキナーゼ阻害薬であるPyrotinib(ピロチニブ)+カペシタビン併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のPERMEATE試験(NCT03691051)の結果がThe Affiliated Cancer Hospital of Zhengzhou University & Henan Cancer HospitalのMin Yan氏らにより公表された。
PERMEATE試験は、HER2陽性乳がん患者(N=78人)に対して3週を1サイクルとして1日1回Pyrotinib+1日2回カペシタビン1000mg/m2(14日間投与し、7日間休薬)併用療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)発現まで実施し、主要評価項目として頭蓋内奏効率(intracranial ORR)を検証した多施設共同の第2相試験である。なお、コーホートは2つに分かれており、コーホートAは放射線療法治療ナイーブの脳転移のあるHER2陽性乳がん(N=59人)、コーホートBは放射線療法治療後に病勢進行したHER2陽性乳がん(N=19人)である。
本試験が開始された背景として、HER2陽性乳がんは脳転移リスクが非常に高い疾患である。しかしながら、効果のある治療選択肢は限られている。以上の背景より、HER2陽性乳がん患者に対する経口チロシンキナーゼ阻害薬Pyrotinib+カペシタビン併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
トラスツズマブの前治療歴がある患者はコーホートAで86%(N=51/59人)、コーホートBで95%(N=18/19人)である。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
フォローアップ期間中央値15.7ヶ月時点における結果、主要評価項目である頭蓋内奏効率(intracranial ORR)は、コーホートAで74.6%(95%信頼区間:61.6~85.0%、N=44/59人)、コーホートBで42.1%(95%信頼区間:20.3~66.5%、N=8/19人)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、下痢がコーホートAで24%(N=14人)、コーホートBで21%(N=4人)。重篤な有害事象(SAE)発症率は、コーホートAで3%(N=2人)、コーホートBで16%(N=3人)を示した。治療関連有害事象(TRAE)による死亡はコーホートA、コーホートBのいずれでも確認されなかった。
以上のPERMEATE試験の結果よりMin Yan氏らは「HER2陽性乳がん患者に対する経口チロシンキナーゼ阻害薬Pyrotinib+カペシタビン併用療法は有用な治療であり、特に放射線療法治療ナイーブの脳転移のあるHER2陽性乳がんに対して良好な抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。 Pyrotinib plus capecitabine for patients with human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer and brain metastases (PERMEATE): a multicentre, single-arm, two-cohort, phase 2 trial(Lancet Oncol. 2022 Jan 24;S1470-2045(21)00716-6. doi: 10.1016/S1470-2045(21)00716-6.)