2021年12月10日、中外製薬株式会社は抗悪性腫瘍剤・微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体であるポライビー点滴静注用30mg、同140mg(一般名:ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)、以下ポライビー)について、「未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」を適応症とする承認申請を行ったと発表した。
抗CD79b抗体薬物複合体(ADC)であるポライビーは、現在、数種類の非ホジキンリンパ腫の治療薬として検討されている。同剤が標的とするCD79bタンパク質は、免疫細胞の1つであるB細胞に特異的に発現しているため、一部の種類の非ホジキンリンパ腫における新たな治療法開発の有望なターゲットとなっている。同剤は、がん細胞に発現するCD79bに結合し、抗がん剤を送達することでこれらのB細胞を特異的に殺傷するため、正常細胞への影響を抑えるといわれている。
今回の承認申請は、未治療のDLBCL患者を対象にした第3相POLARIX試験(NCT03274492の結果に基づく。POLARIX試験は、未治療のDLBCL患者(N=879人)をポライビー+R-CHP療法(リツキサン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾン)を6サイクル実施後にリツキサンを2サイクル投与する群とプラセボ+R-CHOP療法(リツキサン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン)を6サイクル実施後にリツキサンを2サイクルする群に1:1に振り分け有効性、安全性および薬物動態を評価したランダム化二重盲検プラセボ対照試験の結果に基づくもの。なお、同試験には日本も参加した。
同試験の結果、ポライビーとR-CHPの併用療法は未治療のDLBCLに対する標準治療と比較して、20年ぶりに有意な改善を示したという。
同社代表取締役社長CEOの奥田修氏はプレスリリースにて、「DLBCLは、非ホジキンリンパ腫の3割を占める最も多い病型ですが、R-CHOP療法以降、20年にわたり新しい治療法が登場してきませんでした」と話すとともに、「ポライビーとR-CHP併用療法が、標準治療と比較し病勢増悪までの期間を延長したことは、未治療のDLBCL治療の転換点になり得ると考えています。この新たな治療レジメンを一日でも早く患者さんへお届けできるよう、承認取得に向け進んでまいります」と述べている。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)とは びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、非ホジキンリンパ腫(NHL)の約3分の1を占める最も頻度の高い病型で、進行度の速い中悪性度のもの。一般的には1次治療への反応は良好とされる一方で、約40%の患者は再発もしくは難治性となる。その場合の治療選択肢(救援療法)は限定的で、生存期間も短いと報告されている。世界では毎年推計約15万人がDLBCLと診断される。
参照元:中外製薬株式会社 ニュースリリース