2021年10月12日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の転移性大腸がん患者を対象にファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬であるオプジーボ(一般名:ニボルマブ、以下オプジーボ)+低用量の抗CTLA-4抗体薬であるヤーボイ(一般名:イピリムマブ、以下ヤーボイ)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のCheckMate142試験(NCT02060188)の結果がUSC Norris Comprehensive Cancer CenterのHeinz-Josef Lenz氏らにより公表された。
CheckMate142試験は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療として2週を1サイクルとしてオプジーボ+6週を1サイクルとして低用量ヤーボイ併用療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)を検証した第2相試験である。
本試験が開始された背景として、抗PD-1抗体薬オプジーボ単剤療法、抗PD-1抗体薬オプジーボ+抗CTLA-4抗体薬ヤーボイ併用療法は、標準治療後に病勢進行した高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の転移性大腸がん患者に対する治療としてアメリカ食品医薬品局(FDA)より承認されている。以上の背景より、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としての本治療の有用性を検証する目的で開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値29.0ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は69%(95%信頼区間:53~82%)、病勢コントロール率(DCR)は84%(95%信頼区間:70.5~93.5%)をそれぞれ示した。また、奏効の内訳として完全奏効率(CR)は13%の患者で確認された。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)中央値はいずれも未到達であった。また、臨床的ベネフィットはKRAS遺伝子変異、BRAF遺伝子変異を含む患者背景の偏りに関係なく確認された。一方の安全性として、グレード3、4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は22%、治療関連有害事象(TRAE)を原因にした治療中止率は13%の患者で確認された。
以上のCheckMate142試験の結果よりHeinz-Josef Lenz氏らは「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)の転移性大腸がん患者に対するファーストライン治療としての抗PD-1抗体薬オプジーボ+低用量の抗CTLA-4抗体薬ヤーボイ併用療法は、持続的で臨床的意義のある抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。
First-Line Nivolumab Plus Low-Dose Ipilimumab for Microsatellite Instability-High/Mismatch Repair-Deficient Metastatic Colorectal Cancer: The Phase II CheckMate 142 Study(J Clin Oncol. 2021 Oct 12;JCO2101015. doi: 10.1200/JCO.21.01015.)