2021年7月12日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてステージIIIA非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-L1抗体薬であるイミフィンジ(一般名:デュルバルマブ、以下イミフィンジ)+化学療法の有効性、安全性を検証した第2相のSAKK 16/00試験(NCT02572843)の結果がUniversity Hospital BaselのSacha I. Rothschild氏らにより公表された。
本試験は、ステージIIIA非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法として3週を1サイクルとしてシスプラチン100mg/m2+ドセタキセル85mg/m2を3サイクル投与後、2週を1サイクルとしてイミフィンジ750mg単剤を2サイクル投与し、主要評価項目として1年無イベント生存率(EFS:有意差基準として48~65%を設定)を検証したシングルアームの第2相試験である。
本試験に登録された68人の患者に対する結果は下記の通りである。術前化学療法としてのシスプラチン+ドセタキセル併用療法後の放射線画像による奏効率は43%(95%信頼区間:31%~56%)、イミフィンジ単剤療法後の放射線画像による奏効率は58%(95%信頼区間:45%~71%)を示した。
また、55人の患者が切除され、その内MPR(major pathologic response:10%以下の生存腫瘍細胞)を達成した患者が62%(N=34人)、病理学的完全奏効率(pCR)を達成した患者が18%(N=10人)であった。術後のダウンステージ(ypN0-1)が確認された患者は67%(N=37人)で、手術を実施した患者の93%(N=51人)がR0切除率を達成した。
主要評価項目である1年無イベント生存率(EFS)は73%(90%信頼区間:63~82%)、フォローアップ期間中央値28.6ヶ月時点における無イベント生存期間(EFS)中央値は未到達だった。
一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)を発症した患者は88%(N=59人)を示した。なお、このうち2件の重篤な有害事象(SAE)が発生しているが、その原因は治療関連ではないことが確認されている。
以上のSAKK 16/00試験の結果よりSacha I. Rothschild氏らは「ステージIIIA非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法としてシスプラチン+ドセタキセル併用療法への抗PD-L1抗体薬イミフィンジの上乗せ効果は、化学療法単独の過去データよりもmajor pathologic response、1年無イベント生存率(EFS)を改善する可能性が示唆されました」と結論を述べている。
SAKK 16/14: Durvalumab in Addition to Neoadjuvant Chemotherapy in Patients With Stage IIIA(N2) Non–Small-Cell Lung Cancer—A Multicenter Single-Arm Phase II Trial(J Clin Oncol. 2021 Jul 12;JCO2100276. doi: 10.1200/JCO.21.00276.)