2021年6月4日~8日、オンラインミーティングで開催されている第57回米国臨床腫瘍学会(ASCO 2021)にて治療歴のある慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるカルケンス(一般名:アカラブルチニブ、以下カルケンス)単剤療法の有効性、安全性の非劣勢をブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるイムブルビカ(一般名:イブルチニブ、以下イムブルビカ)単剤療法と比較検証した第3相のELEVATE-RR試験(NCT02477696)の結果がThe Ohio State University Wexner Medical CenterのJohn C. Byrd氏らにより公表された。
ELEVATE-RR試験は、治療歴のある慢性リンパ性白血病(CLL)のうちdel(17p)またはdel(11q)の患者(N=533人)に対して1日2回カルケンス100mg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与する群(N=268人)、または1日1回イムブルビカ420mg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与する群(N=265人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全グレードの心房細動発症率、グレード3以上の感染症発症率、全生存率(OS)などを比較検証したオープンラベルランダム化の第3相試験である。
本試験に登録された533人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は66歳。前治療歴中央値は2レジメン。遺伝子異常はdel(17p)45.2%、del(11q)64.2%。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
本試験のフォローアップ期間中央値40.9ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はカルケンス単剤群の38.4ヶ月に対してイムブルビカ単剤群で38.4ヶ月と、イムブルビカ単剤群に対してカルケンス単剤群の非劣勢が示された(HR:1.00、95%信頼区間:0.79-1.27)。
副次評価項目である全グレードの心房細動発症率はカルケンス単剤群の9.4%に対してイムブルビカ単剤群で16.0%ち、カルケンス単剤群で統計学的有意に低率であった(P=0.023)。グレード3以上の感染症発症率はカルケンス単剤群の30.8%に対してイムブルビカ単剤群で30.0%と、両群間でほぼ同等であった。
全生存期間(OS)中央値は両群間で未到達であり、カルケンス単剤群で死亡(OS)のリスクを18%減少(HR:0.82、95%信頼区間:0.59-1.15)を示した。
その他の安全性として、20%以上の患者で確認された全グレードの有害事象(AE)発症率は下記の通り。高血圧はカルケンス単剤群の9.4%に対してイムブルビカ単剤群で23.2%、関節痛はカルケンス単剤群の15.8%に対してイムブルビカ単剤群で22.8%、下痢はカルケンス単剤群の34.6%に対してイムブルビカ単剤群で46.0%と、これらの有害事象(AE)はカルケンス単剤群で低率であった。
一方、頭痛はカルケンス単剤群の34.6%に対してイムブルビカ単剤群で20.2%、咳はカルケンス単剤群の28.9%に対してイムブルビカ単剤群で21.3%と、これらの有害事象(AE)はイムブルビカ単剤群で低率であった。
以上のELEVATE-RR試験の結果よりJohn C. Byrd氏らは「治療歴のある慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬カルケンス単剤療法は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イムブルビカに対して無増悪生存期間(PFS)の非劣勢を示しました。また、安全性面においても心毒性はカルケンス単剤療法群で低率でした」と結論を述べている。
First results of a head-to-head trial of acalabrutinib versus ibrutinib in previously treated chronic lymphocytic leukemia.(2021 ASCO Annual Meeting,Abstract No:7500)