EZH2阻害剤タズベリク、EZH2遺伝子変異陽性濾胞性リンパ腫で承認を取得ーエーザイー


  • [公開日]2021.06.29
  • [最終更新日]2021.06.28

6月23日、エーザイ株式会社は、EZH2阻害剤であるタズベリク(一般名:タゼメトスタット臭化水素酸塩、以下タズベリク)について、再発または難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)を適応症とし、国内において製造販売承認を取得したと発表した。

濾胞性リンパ腫は、低悪性度B細胞リンパ腫であり、非ホジキンリンパ腫の約1~2割を占める。病勢進行は緩やかであり、化学療法の感受性が良好である一方、再発を繰り返すことが多い治療困難な疾患であり、新たな治療戦略が求められている。また、濾胞性リンパ腫の7~27%はEZH2遺伝子に機能獲得型変異を有しており、EZH2遺伝子変異陽性濾胞性リンパ腫の国内患者数は約600~2400人と推計されている。

タズベリクは、発がんプロセスに関与するEZH2を選択的に阻害するファーストインクラスの経口EZH2阻害剤。それによりがん関連遺伝子の発現を制御し、がん細胞の増殖を抑制する。

今回の承認は、エーザイ株式会社が実施した第2相206試験や米Epizyme社が実施した海外臨床試験の結果に基づくもの。206試験は、前治療後に再発・増悪したEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫患者などを対象に、主要評価項目として客観的奏効率ORR)、副次評価項目として安全性を評価した試験である。同試験の結果、再発または難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫患者(N=17人)における客観的奏効率(ORR)は76.5%(90%信頼区間:53.9-91.5)であり、事前に設定した閾値奏効率を統計学的有意に達成した。

一方、有害事象として、味覚異常(52.9%)、上咽頭炎(35.3%)、リンパ球減少症(29.4%)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加(29.4%)が報告され、今回のタズベリクの承認条件として、製造販売後一定の症例数における特定使用成績調査(全例調査)を行うこととなっている。

エーザイは、ニュースリリースにて「日本においてタズベリクをEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫治療の新たな選択肢としてお届けすることで、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります」と述べている。

タズベリク(一般名:タゼメトスタット臭化水素酸塩)とは
タズベリクはエピジェネティクス関連タンパク質のうち、ヒストンメチル基転移酵素のひとつであり、発がんプロセスに関与するEZH2を選択的に阻害するEZH2阻害剤。また、S-アデノシルメチオニン(メチル基供与体)と競合的に阻害することでH3K27のメチル化を抑制し、がん関連遺伝子の発現を抑制する。米国では2020年1月に「成人または16歳以上の小児における根治切除不適応の転移性または局所進行性類上皮肉腫」の適応で迅速承認を受けており、同年6月には「少なくも2レジメン以上の前治療歴があり、FDAが承認したEZH2遺伝子変異の検査で陽性と診断された成人の再発または難治性の濾胞性リンパ腫」および「他に治療手段がない成人の再発または難治性の濾胞性リンパ腫」の適応で迅速承認を受けている。

EZH2とは
エピジェネティクス関連タンパク質群のうちヒストンメチル基転移酵素に属し、ヒストンタンパクH3の27番目のリジン残基(H3K27)のメチル化を特異的に触媒することで種々の遺伝子発現を制御する。EZH2遺伝子の機能獲得型変異や過剰発現、あるいはEZH2抑制因子の機能不全によるH3K27のメチル化の亢進が発がんおよび腫瘍増殖に重要な役割を担っていると考えられている。

参照元:
エーザイ株式会社 ニュースリリース

×

悪性リンパ腫の治験・臨床試験広告

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン