5月20日、中外製薬株式会社は、血液検体による包括的ながん関連遺伝子解析システムである「FoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイル」に、ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬のオラパリブ(商品名:リムパーザ、以下オラパリブ)のBRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対するコンパニオン診断機能を追加する承認取得をしたと発表した。
今回の承認によって、FoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイルを用いてBRCA1/2遺伝子変異を検出することで、エンザルタミドもしくはアビラテロンによる前治療後に進行を認めたBRCA1/2遺伝子変異陽性mCRPCに対するオラパリブの使用の適応判定の補助が可能となる。これにより、組織検体を用いて遺伝子変異解析を行うプログラムの「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」とともに、組織または血液検体を用いた2つの包括的ゲノムプロファイリング検査によってオラパリブの適応判定が可能となる。
同社代表取締役社長CEOの奥田修氏は「オラパリブの転移性前立腺がんに対するコンパニオン診断として、昨年12月に承認された組織検体によるFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルに続き、血液検体によるFoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイルが承認されたことを嬉しく思います」と語るとともに、「がん治療における個別化医療の進展によりmCRPCの治療戦略は大きく変化しており、患者さんが最適な治療を選択するうえで、遺伝子変異の状況を理解することは重要です。適応判定を行う方法として組織検体に血液検体による検査の選択肢が加わることで、オラパリブによる効果が見込める患者さんに治療をお届けする一助となります。今後もがん治療における個別化医療の高度化への貢献を目指し、取り組みを進めていきます」と述べている。
FoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイルとは FoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイルは、次世代シークエンサーを用いた血液検体による包括的ながん関連遺伝子解析システム。がん関連遺伝子に対するゲノムプロファイリング機能、および複数の分子標的薬のコンパニオン診断機能を有するファウンデーションメディシン社(FMI)が開発した医療機器プログラムとして、厚生労働省より承認されている。進行固形がんの患者を対象に、血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA: circulating tumor DNA)を用いることで、遺伝子のshort variantsにおける主な変異(置換、挿入、欠失)や遺伝子再編成など324のがん関連遺伝子の解析が可能である。
BRCA遺伝子変異とは BRCA1、BRCA2は、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子。細胞の遺伝的安定性の維持において重要な役割を担っているため、これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されない、もしくは正常に機能しないため、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性がある。その結果、細胞はがん化につながる遺伝子異常をさらに起こす可能性が高くなるため、リムパーザを含むPARP阻害薬への感受性が高まる。
参照元:中外製薬株式会社 ニュースリリース