2021年5月11日、医学誌『The Lancet Oncology』にて抗PD-1抗体薬抵抗性のある転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対して抗CTLA-4抗体薬であるヤーボイ(一般名:イピリムマブ、以下ヤーボイ)±抗PD-1抗体薬キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ、以下キイトルーダ)もしくはオプジーボ(一般名:ニボルマブ、以下オプジーボ)併用療法の有効性、安全性を検証したレトロスペクティブ(後ろ向き)コホート試験の結果がUniversity of SydneyのInes Pires da Silva氏らにより公表された。
本試験は、抗PD-1抗体薬抵抗性のある転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対してヤーボイ単剤療法を投与する群、またはヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用療法を投与する群に分け、評価項目として客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性を検証したレトロスペクティブ多施設共同の試験である。
転移性悪性黒色腫(メラノーマ)に対する抗PD-1抗体薬による治療は病勢コントロール率(DCR)30%程度を示し、長期に渡り抗腫瘍効果を示す。しかし、約3分の2の患者は病勢進行し、有用性のある後続治療法を開発する必要性がある。以上の背景より、抗PD-1抗体薬抵抗性のある転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対する抗CTLA-4抗体薬であるヤーボイ単剤療法、ヤーボイ+抗PD-1抗体薬であるキイトルーダもしくはオプジーボ併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された355人の患者における、フォローアップ期間中央値22.1ヶ月時点における結果は下記の通りである。客観的奏効率(ORR)はヤーボイ単剤群13%(N=21/162人)に対してヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群31%(N=60/193人)で、ヤーボイ単剤群に比べてヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群で高率な客観的奏効率(ORR)を示した(P<0.0001)。
全生存期間(OS)中央値はヤーボイ単剤群8.8ヶ月(95%信頼区間:6.1~11.3ヶ月)に対してヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群20.4ヶ月(95%信頼区間:12.7~34.8ヶ月)、ヤーボイ単剤群に比べてヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群で死亡(OS)のリスクを50%減少(HR:0.50、95%信頼区間:0.38~0.66、P<0.0001)を示した。
無増悪生存期間(PFS)中央値はヤーボイ単剤群2.6ヶ月(95%信頼区間:2.4~2.9ヶ月)に対してヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群3.0ヶ月(95%信頼区間:2.6~3.6ヶ月)、ヤーボイ単剤群に比べてヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを31%減少(HR:0.69、95%信頼区間:0.55~0.87、P=0.0019)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3~5の有害事象(AE)発症率はヤーボイ単剤群33%に対してヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群31%、その内訳は下記の通りである。グレード3~5の下痢もしくは大腸炎はヤーボイ単剤群20%に対してヤーボイ+キイトルーダもしくはオプジーボ併用群12%、ALT/AST増加は12%に対して9%を示した。
以上のレトロスペクティブ試験の結果よりInes Pires da Silva氏らは「抗PD-1抗体薬抵抗性のある転移性悪性黒色腫(メラノーマ)患者に対する抗CTLA-4抗体薬ヤーボイ+抗PD-1抗体薬キイトルーダもしくはオプジーボ併用療法は、ヤーボイ単剤療法に比べて客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を改善したが、グレード3~5の有害事象(AE)発症率は両群間で同等であった。抗CTLA-4抗体薬ヤーボイ+抗PD-1抗体薬キイトルーダもしくはオプジーボ併用療法はヤーボイ単剤療法よりも優先されるべき結果となりました」と結論を述べている。
Ipilimumab alone or ipilimumab plus anti-PD-1 therapy in patients with metastatic melanoma resistant to anti-PD-(L)1 monotherapy: a multicentre, retrospective, cohort study(Lancet Oncol. 2021 May 11; S1470-2045(21)00097-8. doi: 10.1016/S1470-2045(21)00097-8.)