2021年4月20日、医学誌『JAMA Network』にてエストロゲン受容体陽性HER2陰性/トリプルネガティブ転移性乳がん患者に対するパクリタキセル+オーロラAキナーゼ阻害薬であるAlisertib(アリゼルチブ:MLN8237)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02187991)の結果がBaylor University Medical CenterのJoyce O’Shaughnessy氏らにより公表された。
本試験は、エストロゲン受容体陽性HER2陰性/トリプルネガティブ転移性乳がん患者(N=174人)に対して28日を1サイクルとして1、8、15日目にパクリタキセル90mg/m2単剤療法を投与する群(N=86人)、28日を1サイクルとして1、8、15日目にパクリタキセル60mg/m2+1~3日目、8~10日目、15~17日目に1日2回Alisertib(MLN8237)40mg併用療法を投与する群(N=88人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)等を比較検証したランダム化の第2相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値22ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はパクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群の10.2ヶ月(95%信頼区間:3.8~15.7ヶ月)に対してパクリタキセル単剤群で7.1ヶ月(95%信頼区間:3.8~10.6ヶ月)と、パクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを44%減少(HR:0.56、95%信頼区間:0.37-0.84、P=0.005)した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はパクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群の26.3ヶ月(95%信頼区間:12.4~37.2ヶ月)に対して、パクリタキセル単剤群で25.1ヶ月(95%信頼区間:11.0~31.4ヶ月)と、パクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群で死亡(OS)のリスクを11%減少(HR:0.89、95%信頼区間:0.58-1.38、P=0.61)した。
一方の安全性として、グレード3~4の有害事象(AE)発症率はパクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群の84.8%(N=56人)に対してパクリタキセル単剤群で48.6%(N=34人)だった。主なグレード3~4の有害事象(AE)は下記の通りである。好中球減少症はパクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群の59.5%に対してパクリタキセル単剤群で16.4%、貧血はパクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群の9.5%に対してパクリタキセル単剤群で1.2%、下痢はパクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群の10.7%に対してパクリタキセル単剤群で0%、口内炎/口腔粘膜炎はパクリタキセル+Alisertib(MLN8237)併用群の15.5%に対してパクリタキセル単剤群で0%を示した。
以上の第2相試験の結果よりJoyce O’Shaughnessy氏らは「エストロゲン受容体陽性HER2陰性/トリプルネガティブ転移性乳がん患者に対するパクリタキセル+オーロラAキナーゼ阻害薬Alisertib(MLN8237)併用療法は、パクリタキセル単剤療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を改善し、有害事象(AE)も管理可能でした」と結論を述べている。
Efficacy and Safety of Weekly Paclitaxel With or Without Oral Alisertib in Patients With Metastatic Breast Cancer: A Randomized Clinical Trial(JAMA Netw Open. 2021 Apr 1;4(4):e214103. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.4103.)