局所進行性/転移性非小細胞肺がんに対する二次/三次治療としての抗PD-1抗体薬チスレリズマブ単剤療法、ドセタキセルに比べて全生存期間を改善AACR2021


  • [公開日]2021.05.07
  • [最終更新日]2021.05.07
この記事の3つのポイント
・局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者が対象の第3相試験
・Tislelizumab(チスレリズマブ)単剤療法有効性安全性ドセタキセルと比較検証
・全解析集団における全生存期間は、17.2ヶ月であり、ドセタキセル単剤療法の11.9ヶ月に比べて改善を示した

2021年4月9日~14日、オンラインミーティングで開催された米国癌研究会(AACR 2021)にて、局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者に対する二次治療、三次治療としての抗PD-1抗体薬であるTislelizumab(チスレリズマブ:BGB-A317)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のRATIONALE 303試験(NCT03358875)の結果がTianjin Medical University Cancer Institute and HospitalのCaicun Zhou氏らにより公表された。

RATIONALE 303試験とは、局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者(N=805人)に対する二次治療、三次治療として3週を1サイクルとしてチスレリズマブ200mg単剤療法を投与する群(N=535人)、または3週を1サイクルとしてドセタキセル75mg/m2単剤療法を投与する群(N=270人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてIntent-To-Treat(ITT)集団での全生存期間(OS)、PD-L1陽性(PD-L1≧25%)集団での全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)、客観的奏効率ORR)、奏効持続期間(DOR)などを比較検証した第3相試験である。

本試験が開始された背景として、白金製剤ベースの化学療法後に病勢進行した進行性/転移性扁平上皮非小細胞肺がんは、抗PD-1/PD-L1抗体薬により全生存期間(OS)が改善することが示されている。以上の背景より、局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者に対する二次治療、三次治療としての抗PD-1抗体薬チスレリズマブb単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。

本試験のフォローアップ期間中央値19ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目であるITT集団での全生存期間(OS)中央値はチスレリズマブ単剤群17.2ヶ月に対してドセタキセル単剤群11.9ヶ月、ドセタキセル単剤群に比べてチスレリズマブ単剤群で死亡(OS)のリスクを36%(HR:0.64、95%信頼区間:0.53-0.78、P<0.0001)統計学的有意に改善した。

また、PD-L1陽性集団での全生存期間(OS)中央値はチスレリズマブ単剤群19.1ヶ月に対してドセタキセル単剤群11.9ヶ月、ドセタキセル単剤群に比べてチスレリズマブ単剤群で死亡(OS)のリスクを48%(HR:0.52、95%信頼区間:0.38-0.71)改善した。

ITT集団での無増悪生存期間(PFS)中央値はチスレリズマブ単剤群4.1ヶ月に対してドセタキセル単剤群2.6ヶ月、ドセタキセル単剤群に比べてチスレリズマブ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを36%(HR:0.64、95%信頼区間:0.53-0.76、P<0.0001)改善した。

客観的奏効率(ORR)はチスレリズマブ単剤群21.9%(N=117人)に対してドセタキセル単剤群7.0%(N=19人)、ドセタキセル単剤群に比べてチスレリズマブ単剤群で客観的奏効率(ORR)は高率であった(OR:3.71、95%信頼区間:2.24-6.14、P<0.0001)。奏効持続期間(DOR)中央値はチスレリズマブ単剤群13.5ヶ月(95%信頼区間:8.5-21.8ヶ月)に対してドセタキセル単剤群6.2ヶ月(95%信頼区間:2.1-7.2ヶ月)を示した。

一方の安全性として、全グレード有害事象(AE)は下記の通りである。貧血がチスレリズマブ単剤群28.5%に対してドセタキセル単剤群43.4%、ALT増加が19.9%に対して14.7%、咳が19.5%に対して15.5%、AST増加18.9%に対して12.0%、食欲減退15.4%に対して22.9%、体重減少が15.2%に対して10.1%を示した。グレード3以上の有害事象(AE)は下記の通りである。貧血がチスレリズマブ単剤群3.4%に対してドセタキセル単剤群6.2%、無力症が1.1%に対して5.4%を示した。

以上のRATIONALE 303試験の結果よりCaicun Zhou氏らは「局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者に対する二次治療、三次治療としての抗PD-1抗体薬チスレリズマブ単剤療法は、ドセタキセル単剤療法に比べて全生存期間(OS)を改善しました」と結論を述べている。

Results from RATIONALE 303: A global phase 3 study of tislelizumab (TIS) vs docetaxel (TAX) as second- or third-line therapy for patients with locally advanced or metastatic NSCLC(AACR Annual Meeting2021,Abstract CT039)

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