2021年4月1日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて術前補助化学療法後に完全病理学的奏効(CR)が達成できなかったHER2陰性ホルモン受容体陽性乳がん患者に対する術後療法としての内分泌療法へのCDK(サイクリン依存性キナーゼ)4/6阻害薬であるイブランス(一般名:パルボシクリブ、以下イブランス)の上乗せ効果を比較検証した第3相のPENELOPE-B試験(NCT01864746)の結果がGerman Breast GroupのSibylle Loibl氏らにより公表された。
PENELOPE-B試験とは、術前補助化学療法後に完全病理学的奏効(CR)が達成できなかったHER2陰性ホルモン受容体陽性乳がん患者(N=1250人)に対する術後療法として28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回イブランス125mg+内分泌療を投与する群、またはプラセボ+内分療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無浸潤性疾患生存期間(iDFS)を比較検証した第3相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値42.8ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無浸潤性疾患生存期間(iDFS)はイブランス+内分療法、プラセボ+内分療法の両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.93、95%信頼区間:0.74-1.17、P=0.525)。3年無浸潤性疾患生存率(iDFS)はイブランス+内分療法81.2%(95%信頼区間:77.8%-84.1%)に対してプラセボ+内分療法77.7%(95%信頼区間:74.1%-80.9%)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認された重篤な有害事象(SAE)は感染症、血管障害であり、両群間で重篤な有害事象(SAE)の発症に大きな差は確認されなかった。
以上のPENELOPE-B試験の結果よりSibylle Loibl氏らは「術前補助化学療法後に完全病理学的奏効(CR)が達成できなかったHER2陰性ホルモン受容体陽性乳がん患者に対する術後療法として内分療法に対するCDK4/6阻害薬イブランスの上乗せは、無浸潤性疾患生存期間(iDFS)を統計学的有意に改善しませんでした」と結論を述べている。
Palbociclib for Residual High-Risk Invasive HR-Positive and HER2-Negative Early Breast Cancer—The Penelope-B Trial(J Clin Oncol. 2021 Apr 1;JCO2003639. doi: 10.1200/JCO.20.03639.)