4月8日、第一三共株式会社は、開発中のMenin-MLL結合阻害剤、DS-1594について、再発または難治性の急性骨髄性白血病(AML)ならびに急性リンパ性白血病(ALL)患者を対象とした第1/2相試験において、最初の患者へ投与を開始したと発表した。
Meninは、他のタンパク質との相互作用で遺伝子発現を調節するタンパク質であり、MLL (Mixed-Lineage Leukemia:混合系統白血病)遺伝子は、白血病の発症と増殖を促進するタンパク質を発現すると考えられている。この2つのタンパク質の相互作用により造血幹細胞の維持に必要なタンパク質を異常に発現させることが急性白血病の発症要因の1つと示唆されており、中でもMLL遺伝子変異陽性の急性白血病ではこれらのタンパク質の異常発現が見られる。DS-1594はそのMeninタンパク質とMLLタンパク質の相互作用を阻害することで白血病細胞の増殖にブレーキをかける役割を持つよう設計されている。現在、Menin-MLL結合阻害剤として承認を得た治療薬は存在していない。
今回の第1/2相試験は再発または難治性のAMLならびにALL患者を対象とした臨床試験であり、第一三共と米国テキサス大学MD Anderson CancerCenterによって実施される。
第1相試験はDS-1594の最大耐用量や推奨用量を決定する用量漸増試験で、用量制限毒性や推奨用量などを主要評価項目として設定し、遺伝子変異の有無は関係なく実施される。一方、第2相試験では、第1相試験で決定された推奨用量において、特定の遺伝子変異を有する患者に対する安全性ならびに有効性などを評価す用量展開試験である。第2相試験には世界で最大170名の患者を登録する予定であるという。
急性骨髄性白血病(AML)とは 急性骨髄性白血病(AML)は成人の急性白血病の中で最も一般的であり、急性白血病全体の新規罹患者数の約 33%を占める。5年生存率は28.7%であり主要な白血病の中では最も低い。
急性リンパ性白血病(ALL)とは 急性リンパ性白血病(ALL)は白血病の中でも希少ながん種であり、2020年の米国での新規罹患者数は約6千人であった。5年生存率は全年齢層で68.8%であるが、成人では有意に低いことが報告されている。
参照元:第一三共株式会社 プレスリリース