3月23日、バイエル株式会社は、 トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬のヴァイトラックビ(一般名:ラロトレクチニブ硫酸塩)について、神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体(NTRK)融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんの治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。
トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合のあるがんは、様々ながん種で異なる頻度で発生するが、一般的には稀である。TRK融合を有するがんは、NTRK遺伝子が別の遺伝子と融合し、通常とは異なるTRKタンパク質を生じることで発生する。TRK融合タンパク質は恒常的に活性化するか、過剰発現し増殖シグナル伝達を誘発する。TRK融合タンパク質が発現すると、発現部位に関係なく、がんの増殖を促進する発がん性のドライバーとして作用する。
今回の承認は、第2相NAVIGATE試験と第1/2相SCOUT試験の結果に基づくもの。NAVIGATE試験は成人および青年期の患者(N=116人)を対象に行われ、奏効率は65.2%、完全奏効率は16.9%を示した。一方、SCOUT試験は小児(N=73名)を対象に実施され、奏効率88.9%、完全奏効率22.2%であった。また2つの臨床試験より、ヴァイトラックビは良好な安全性プロファイルを示した。
独バイエル社のオンコロジー開発責任者のスコット・フィールズ「ヴァイトラックビのように、がんの増殖を促すゲノム異常を直接標的とした治療は、腫瘍の種類や患者さんの年齢にかかわらず、治療成績を大幅に改善する可能性を有しており、日本の患者さんや医師にとって有益です。ヴァイトラックビの承認を機に、ゲノムの観点からより多くの患者さんを特定し、最終的に治療効果を改善していくための高品質で利用しやすい分子診断の重要性がさらに認識されるものと思います」と述べている。
なお、ヴァイトラックビについては、米ファウンデーション・メディシン社により開発された遺伝子変異解析プログラムである「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」が2021年1月に適応追加承認を取得しており、ヴァイトラックビの投与によって抗腫瘍効果を期待されるTRK融合のあるがん患者を特定するコンパニオン診断が行える。
ヴァイトラックビとは ヴァイトラックビは選択的にTRK阻害する経口薬。肺がん、甲状腺がん、悪性黒色腫、消化管間質腫瘍(GIST)、直腸結腸がん、乳がん、唾液腺がんなど19種の固形がんで有効性が評価された。ヴァイトラックビはTRK阻害剤の中で、様々ながん腫や小児も含む最大規模のデータと3年を超える最長のフォローアップ期間のデータを有している。
参照元:バイエル薬品工業株式会社 プレスリリース