ROS1融合遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性非小細胞肺がんに対するロズリートレク単剤療法、客観的奏効率67.1%を示すJournal of Clinical Oncologyより


  • [公開日]2021.03.16
  • [最終更新日]2021.03.15
この記事の3つのポイント
・ROS1融合遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者が対象の第1/2相試験の統合解析の結果
・ROS1/TRK阻害薬ロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ単剤療法有効性安全性を検証
・客観的奏効率ORR)は67.1%、奏効持続期間(DOR中央値は15.7ヶ月、12ヶ月奏効持続率は63%を示した

2021年3月1日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてROS1融合遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者に対するROS1/TRK阻害薬であるロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ、以下ロズリートレク)単剤療法の有効性、安全性を検証した3つの第1/2相のALKA-372-001試験(EudraCT 2012-000148-8)、STARTRK-1試験(NCT0209781)、STARTRK-2試験(NCT02568267)の統合解析の結果がMedical University of GdańskのRafal Dziadziuszko氏らにより公表された。

本解析は、ROS1融合遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者(N=161人)を有効性評価対象とし、1日1回ロズリートレク600mg単剤療法を投与した。主要評価項目は観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、副次評価項目は増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などとした。

本試験が開始された背景として、非小細胞肺がんのうち、ROS1融合遺伝子変異陽性は約1~2%である。そして、その最大40%程度の患者は診断時に中枢神経系CNS)転移を有している。ROS1融合遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者に対するファーストライン治療としては、クリゾチニブ単剤療法が承認されているが、本治療は中枢神経系(CNS)転移を有する患者に対して抗腫瘍効果が十分ではない。以上の背景より、ROS1/TRK阻害薬であるロズリートレク単剤療法の有用性を検証する目的で本試験らが開始された。

本試験の治療期間中央値10.7ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は67.1%(N=108人、95%信頼区間:59.3%-74.3%)、奏効持続期間(DOR)中央値は15.7ヶ月、12ヶ月奏効持続率(DOR)は63%を示した。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は15.7ヶ月、12ヶ月無増悪生存率(PFS)は55%。全生存期間(OS)中央値は未到達、12ヶ月全生存率(OS)は81%を示した。

中枢神経系(CNS)転移を有する患者(N=24人)における客観的奏効率(ORR)は79.2%(N=19人、95%信頼区間57.9%-92.9%)、無増悪生存期間(PFS)中央値は12.0ヶ月(95%信頼区間:6.2-19.3ヶ月)を示した。

一方の安全性としては、既存の臨床試験で確認されているロズリートレクの安全性プロファイルと一致しており、本試験で新たに確認された有害事象(AE)はなかった。

以上の第1/2相のALKA-372-001試験、STARTRK-1試験、STARTRK-2試験の統合解析の結果よりRafal Dziadziuszko氏らは「ROS1融合遺伝子変異陽性の局所進行性/転移性非小細胞肺がん患者に対するROS1/TRK阻害薬であるロズリートレクは、中枢神経系(CNS)転移の有無に関係なく良好な抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。

Updated Integrated Analysis of the Efficacy and Safety of Entrectinib in Locally Advanced or Metastatic ROS1 Fusion–Positive Non–Small-Cell Lung Cancer(J Clin Oncol. 2021 Mar 1;JCO2003025. doi: 10.1200/JCO.20.03025.)

×

この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン