2021年2月4日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてHER2陽性の早期乳がん患者に対するアジュバント療法として抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるパージェタ(一般名:ペルツズマブ、以下パージェタ)+ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ、以下ハーセプチン)併用療法の有効性、安全性を検証した第3相のAPHINITY試験(NCT01358877)の6年長期フォローアップ解析の結果がInstitut Jules Bordet and L'Université Libre de BruxellesのMartine Piccart氏らにより公表された。
APHINITY試験とは、HER2陽性の早期乳がん患者(N=4805人)に対するアジュバント療法としてパージェタ+ハーセプチン併用療法を1年間投与する群、または化学療法+ハーセプチン併用療法を1年間投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無浸潤疾患生存期間(iDFS)、副次評価項目として心機能および安全性、全生存期間(OS)、無病生存期間(PFS)、健康関連のQOLを比較検証したランダム化二重盲検プラセボ対照二群間比較の国際共同第3試験である。なお、無浸潤疾患生存期間(iDFS)は術後薬物療法後にいずれかの部位での浸潤性乳がんの再発または理由の如何を問わず死亡を認めない生存時間として定義される。
本試験の6年長期フォローアップ解析の結果、副次評価項目である6年全生存率(OS)はパージェタ+ハーセプチン併用群95%に対して化学療法+ハーセプチン併用群94%をそれぞれ示した(HR:0.85、P=0.17)。
主要評価項目である6年無浸潤疾患生存率(iDFS)はパージェタ+ハーセプチン併用群91%に対して化学療法+ハーセプチン併用群88%をそれぞれ示した(HR:0.76、95%信頼区間:0.64-0.91)。
また、リンパ節転移陽性コーホートにおける6年無浸潤疾患生存率(iDFS)はパージェタ+ハーセプチン併用群88%に対して化学療法+ハーセプチン併用群83%をそれぞれ示し、パージェタ+ハーセプチン併用群で無浸潤疾患生存(iDFS)のリスクを28%減少(HR:0.72、95%信頼区間:0.59-0.87)を示した。
ホルモン受容体陽性コーホートにおける6年無浸潤疾患生存率(iDFS)はパージェタ+ハーセプチン併用群で無浸潤疾患生存(iDFS)のリスクを27%減少(HR:0.73、95%信頼区間:0.59-0.92)、ホルモン受容体陰性コーホートにおける6年無浸潤疾患生存率(iDFS)はパージェタ+ハーセプチン併用群で無浸潤疾患生存(iDFS)のリスクを17%減少(HR:0.83、95%信頼区間:0.63-1.10)を示した。
以上のAPHINITY試験の6年長期フォローアップ解析の結果よりMartine Piccart氏らは「HER2陽性の早期乳がん患者に対するアジュバント療法としての抗HER2ヒト化モノクローナル抗体パージェタ+ハーセプチン併用療法は、無浸潤疾患生存率(iDFS)を長期に渡り改善しました。全生存期間(OS)の有用性を完全に評価するためには、より長期の追跡調査を行う必要があります」と結論を述べている。
Adjuvant Pertuzumab and Trastuzumab in Early HER2-Positive Breast Cancer in the APHINITY Trial: 6 Years' Follow-Up(J Clin Oncol. 2021 Feb 4;JCO2001204. doi: 10.1200/JCO.20.01204.)