BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性高リスク早期乳がんに対する術後補助療法としてのリムパーザ単剤療法、無浸潤疾患生存期間の優越性を示し早期解析へー英アストラゼネカ社ー


  • [公開日]2021.03.02
  • [最終更新日]2021.03.02

2月17日、英アストラゼネカ社は、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の高リスク早期乳がんの患者を対象にリムパーザ(一般名:オラパリブ、以下リムパーザ)単剤療法安全性有効性を検証した第3相OlympiA試験について、独立データモニタリング委員会(IDMC)からの勧告を受けて、早期解析および報告を行うと発表した。

乳がんは世界的で見ても女性において最も罹患率の高いがん種であり、患者数は230万人と推定されている。その5%ではBRCA遺伝子変異が認められており、BRCA1遺伝子変異のある女性では約55~65%、BRCA2遺伝子変異を認めた女性では約45%が70歳までに乳がんを発症する。

OlympiA試験は、BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性の高リスク早期乳がんで、根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者を対象に、術後補助療法としてリムパーザ単剤療法を投与する群とプラセボを投与する群に振り分け、有効性と安全性比較検討する、二重盲検、並行群間プラセボ対照、多施設共同第3相試験。本試験の主要評価項目無浸潤疾患生存期間iDFS)とした。

今回のIDMCからの勧告は、事前に規定された中間解析の結果に基づくもの。リムパーザ単剤投与群のiDFSはプラセボ群に対して、優越性の基準をクリアしたことから、BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対して臨床的に意義のある抗腫瘍効果の持続が認められると立証され、主要解析を直ちに実施するように勧告された。

OlympiA試験の国際治験医師でありInstitute of Cancer Research and Kings College LondonのAndrew Tutt氏は、「世界的な大学と産業界のパートナーシップが、遺伝性乳がんを有する女性に対する個別化治療の可能性の研究に役立っていることを喜ばしく思っています。遺伝性乳がんの最多の原因は、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異であり、これらの遺伝子変異は通常よりもかなり早期に乳がんを発症させる可能性があります。このOlympiA試験により、遺伝子検査を使用するだけでなく、この疾患リスクを有する患者さんを特定し、リムパーザがこれらの患者さんの疾患再発を予防する可能性について探索することが可能になりました。本試験のすべての結果を解析し、今後の医学会議で発表できることを楽しみにしています」と述べている。

リムパーザとは
PARP阻害剤であるリムパーザは、BRCA1/2遺伝子変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する。リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させるという機序を持つ。リムパーザについては、DDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中である。

BRCA遺伝子変異とは
BRCA1/2は、損傷したDNAを修復するタンパクを生成する遺伝子であり、細胞の遺伝的安定性の維持に重要な役割を果たす。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されない、または正常に機能せず、DNA損傷が修復されず細胞が不安定になる。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子異常を起こす可能性が高くなり、リムパーザを含むPARP阻害剤への感受性を高めると考えられている。

参照元:
アストラゼネカ株式会社 プレスリリース

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