2021年1月28日~31日までオンラインミーティングで開催された第21回世界肺癌学会議(IASLC 2020)にて完全切除した上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する術後補助療法としての第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるタグリッソ(一般名:オシメルチニブ、以下タグリッソ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のADAURA試験の探索的データ解析の結果がGuangdong Provincial People's HospitalのYi-Long Wu氏らにより公表された。
ADAURA試験とは、完全腫瘍切除したIB期、II期、IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者(N=682人)に対して1日1回タグリッソ80mgを最大3年間または再発するまで投与する群、またはプラセボを投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無病生存期間(DFS)を比較検証した無作為化二重盲検プラセボ対照の国際共同第3相試験である。
今回の探索的データ解析では、術後補助療法としての化学療法治療歴の有無、進行病期の患者背景の違いにより無病生存期間(DFS)の差が出るかどうかを検証している。
本試験の探索的データ解析の結果は下記の通りである。術後補助療法としての化学療法治療歴のある患者群における無病生存期間(DFS)は、プラセボ群に比べてタグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを84%減少(HR:0.16,95%信頼区間:0.10-0.26)した。
また、進行期別の術後補助療法としての化学療法治療歴のある患者群における無病生存期間(DFS)は下記の通りである。ステージII期ではプラセボ群に比べてタグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを85%減少(HR:0.15、95%信頼区間:0.06―0.32)、ステージIIIA期ではプラセボ群に比べてタグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを87%減少(HR:0.13、95%信頼区間:0.06―0.23)した。
一方、術後補助療法としての化学療法治療歴のない患者群における無病生存期間(DFS)は、プラセボ群に比べてタグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを77%nの減少(HR:0.23、95%信頼区間:0.13―0.40)を示した。
また、進行期別の術後補助療法としての化学療法治療歴のない患者群における無病生存期間(DFS)は下記の通りである。ステージIB期ではプラセボ群に比べてタグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを62%減少(HR:0.38、95%信頼区間:0.15―0.88)、ステージII期ではプラセボ群に比べてタグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを80%減少(HR:0.20、95%信頼区間:0.07―0.52)、ステージIIIA期ではプラセボ群に比べてタグリッソ群で病勢進行または死亡(DFS)のリスクを90%減少(HR:0.10、95%信頼区間:0.02―0.29)した。
以上の通り、術後補助療法としての化学療法治療歴の有無、進行病期の患者背景の違いに関係なく、完全腫瘍切除したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後補助療法としてのタグリッソ単剤療法は同等の有効性を示した。
ADAURA試験の探索的データ解析の結果よりYi-Long Wu氏らは「完全腫瘍切除したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術後補助療法としてのタグリッソ単剤療法は、術後補助療法としての化学療法治療歴の有無、進行病期に関係なく、一貫した有用性を示しました」と結論を述べている。
Tagrisso extended disease-free survival regardless of prior adjuvant chemotherapy in early-stage EGFR-mutated lung cancer(AstraZeneca PressReleases)