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CancerXがオンラインで議論「在宅医療~より良い在宅医療のためにできること~」とは? World Cancer Week 2021


  • [公開日]2021.02.18
  • [最終更新日]2021.02.18

 「がんと言われても動揺しない社会へ」の実現を目指す一般社団法人CancerXが、1月31日から2月6日までの1週間、「World Cancer Week 2021」をオンライン開催。その中から、最終日の6日に行われた「CancerX 在宅医療~より良い在宅医療のためにできること~」のセッションについて、レポートする。このセッションでは、認定NPO法人マギーズ東京センター長・共同代表理事の秋山正子氏、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課 薬局・販売制度企画室長の太田美紀氏、日本在宅薬学会理事長の狭間研至氏、医療法人社団オレンジ(福井県福井市)理事長の紅谷浩之氏が登壇。2019年に肺がんの夫を自宅で看取った、慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所研究員の森内倫子氏がモデレーターを務めた。

病気があっても自分らしく過ごせるのが在宅医療のメリット

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で家族の面会を制限する病院が多い中、自宅での療養を希望するがん患者さんが増えているという。

「在宅医療は、病院医療の出前というところから、自分の家だからこそ、その人が好きな生活を多職種でサポートする方向へ進化しています。家に帰ったら家族の負担が大きいのではないかいうイメージの人もまだいるかもしれませんが、福祉用具専門相談員、入浴サービス、鍼灸師など病院にはいない職種も含めていろいろな専門職が、患者さんとご家族を支えます。病気があるけど、やりたいことを続けながら自分らしく過ごせるのが在宅医療のメリットです」
2011年に福井県で初めて複数の医師が24時間365日訪問診療を行う在宅医療専門クリニック・オレンジホームケアクリニックを始め、医療ケア児のサポートも行う医療法人社団オレンジ理事長の紅谷浩之氏は、そう強調した。

 東京都新宿区で20年以上訪問看護を行い、2011年、同区内の団地の一角に「暮しの保健室」を開設し、認定NPO法人マギーズ東京センター長も務める秋山正子氏は、がん患者さんの在宅医療の課題を次のように指摘した。
「早めの在宅医療へのつなぎが必要ですが、外来での診断・治療が中心で医療者の関りが少ないために、次にどういう状態になるのか、どういう準備が必要なのか相談するところにたどりつかないということがあります。また、制度的に、病院への通院ができなくなってからでないと医師の訪問診療が受けられない仕組みになっており、通院できない状態になるまで、訪問看護や介護保険サービスなど在宅医療を支える他のサービスも紹介されていないことが多いのも問題です」

病院医療と併用で早めの在宅医療・介護サービス導入を

 そして、在宅医療の導入がうまくいった70代後半の男性Y・Kさんの事例を紹介した。Y・Kさんは、下咽頭がんで、診断されたときには両側の頸部リンパ節、肝臓、骨に転移があった。

 息子の妻が暮らしの保健室に立ち寄り、「病院で医師から穴を開けると言われたんだけど、どういうことなの」と相談したのをきっかけに、病院の医師の病状説明に保健室の看護師が同行し介護保険申請をサポート。食事の量が減って栄養状態が悪くなったために一時入院したが、経管栄養になって退院する際に、医療保険による訪問看護、介護保険利用による介護用ベッドや車いす、手すりのレンタル、シャワーチェアの購入といった福祉用具の利用を開始した。Y・Kさんは、経口抗がん剤による治療を続けながら、調子の良い時には家業の店先で過ごした。がんの診断時には余命半年と言われたが、徐々に食が細くなりながらも1年以上、本人の希望を叶えながら在宅療養を続け、自宅で息を引き取ったという。

秋山氏は、早めの在宅医療を実現するポイントとして、①気軽に相談できる窓口がある、②病院医療と在宅医療・介護サービスとの併用、③日常生活をできるだけ快適に「~したい」を叶えられる生活を支える――の3点を挙げた。

薬機法の改正で薬剤師ががん患者の在宅療養をサポートする方向へ

 さらに在宅医療では、多職種のサポートがカギになる。厚生労働省医薬・生活衛生局総務課 薬局・販売制度企画室長の太田美紀氏は、住み慣れた地域で安心して薬を使うことができるように、2019年に行われた薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の一部改正について解説した。

 改正のポイントは3つあり、1つは、服薬後のフォローアップを義務づけたことだ。「薬剤師はただ薬を渡すだけではなく、服薬後の指導をしたり相談に乗ったりすることも仕事です。処方した医師と連携を取って情報を提供する必要もあります。自分の生活スタイルに合わせて療養場所を選定する場に薬剤師も関わってほしい」と太田氏は話した。

 2つ目は、患者が自分に適した薬局を選択できるように機能別薬局の認定制度を導入すること。入退院時は医療機関等と情報を共有し在宅医療等では他の薬局と連携しながら地域の拠点として対応できる「地域連携薬局」、そして、がん等の専門的な薬学管理に関係機関と連携して対応する「専門医療機関連携薬局」の認定が行われる予定だ。専門医療機関連携薬局の認定は、まずはがん分野でスタートするという。

 3つ目はオンライン服薬指導の導入。2020年春からは、新型コロナウイルス感染症対策もあって、パソコンやスマートフォンを用いたオンライン服薬指導だけではなく電話での服薬指導ができるようになっている。

 日本在宅薬学会理事長の狭間研至氏は、薬局経営を行う医師の立場から、「薬剤師が薬を出した後も、在宅療養の患者さんを他の業種と一緒に支えるようになれば、患者さんのメリットも大きい」とした。

 モデレーターの慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所研究員の森内倫子氏は、「夫の食事の量が減ってきたときに、薬剤師さんが保険診療で使える栄養補助食品を紹介してくださって少し栄養がとれるようになりました。見守っていてくれているという安心感にもつながりました」と語った。

家族だけで抱え込まずに多職種のサポートを活用しよう

 ただ、在宅医療への薬剤師の関り方や多職種連携の在り方には地域差があるのが現状だ。紅谷氏は、「地域差は確かにありますが、実際に動く人の意識の問題も大きい。例えば、薬剤師さんがプラスαの役割を果たすことで連携を濃くする、ヘルパーさんが不足している地域なら訪問看護師がヘルパーの仕事まで気を配るなど役割に幅を持たせられるのが在宅医療です」と地域の実情に合わせて多職種連携による在宅医療を進める必要性を強調した。

 セッションの最後には、在宅医療を行ううえで、家族が気を付けなければいけないことについて、各登壇者が次のようにコメントした。

 「薬剤師は薬のプロです。薬の効果、副作用、飲みやすさなどは、ぜひ、薬剤師に相談してください。薬を渡した後の情報共有をしっかりやることがこれからのがんの地域医療を支えると思います」(狭間氏)

 「訪問看護は生活の場に行かせていただくので、掃除などをせずいつものままでよいですし気を遣う必要はありません。家族は第2の患者と呼ばれるくらい心理的な悩みを抱えていますし、本人とご家族の意見が異なることもあります。ご家族に休息が必要ならレスパイト入院をする、サービスを増やすなどの選択肢もあります。そのために、話をしやすい人を見つけて何を話しても大丈夫だと伝えたいです」(秋山氏)

 「ぜひ、薬剤師さんに患者さんのケアに入っていただき、いろいろな相談に乗れる立場になってほしいです」(太田氏)

 「病院で看護師さんにやってもらっているようなことを全部やろうとするご家族もまだ多いのですが、在宅でも医師、看護師、薬剤師、ヘルパーさんがいて患者さんとご家族を支える時代になってきています。家族の役割は昔の思い出を共有し、患者さんの趣味やこだわり、好きな味付けを知っていること。家族じゃないとわからないことを語り合い、飲み会をする、深夜にドライブに行くとか病院ではできなかったことを家でやるために在宅医療を利用していただきたいです。家族であまり抱え込まないようにしてください」(紅谷氏)

 在宅医療に関する相談は、マギーズ東京、がん診療連携拠点病院の相談支援センター、各病院の相談室、市区町村の地域包括支援センターなどでも受けられる。必要に応じてそういった相談窓口も利用しつつ、在宅医療をする際には、多職種のサポートを上手に活用したい。

関連リンク:CancerX World Cancer Week 2021

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