腹膜転移を伴う胃がんに対するパクリタキセル腹腔内投与+カペシタビン+オキサリプラチン併用療法、全生存期間14.6ヶ月を示すASCO GI 2021


  • [公開日]2021.02.16
  • [最終更新日]2021.02.15
この記事の3つのポイント
腹膜転移を伴う胃がん患者が対象の第2相試験
パクリタキセル腹腔内投与+XELOX併用療法の有効性安全性を比較検証
全生存期間は14.6ヶ月で、全身化学療法群と比較して死亡リスクを56%減少

2021年1月15日~17日、オンラインミーティングで開催された2021 Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2021)にて腹膜転移を伴う胃がん患者に対するパクリタキセル腹腔内投与+XELOX(カペシタビンオキサリプラチン)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相試験の結果がNational University Health SystemのDaryl Chia氏らにより公表された。

本試験は、腹膜転移を伴う胃がん患者(N=44人)に対して21日を1サイクルとして1、8日目にパクリタキセル腹腔内投与40mg/m2+1~14日目に1日2回カペシタビン1000mg/m2+1日目にオキサリプラチン100mg/m2併用療法を投与し、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)、安全性などを検証した第2相試験である。なお、本治療の有効性比較は、腹膜転移を伴う胃がん患者(N=39人)に対する全身化学療法を投与したレトロスペクティブ試験を基準として実施している。

本試験が開始された背景として、腹膜転移を伴う胃がん患者に対するフルオロピリミジン/タキサン抗がん剤に対するパクリタキセル腹腔内投与の追加は良好な抗腫瘍効果を示している。しかしながら、現在の標準治療であるフルオロピリミジン/プラチナ系抗がん剤に対するパクリタキセル腹腔内投与の有用性は臨床試験で検証されていない。以上の背景より、腹膜転移を伴う胃がん患者に対するパクリタキセル腹腔内投与+XELOX併用療法の有効性を検証する目的で本試験が開始された。

主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はパクリタキセル腹腔内投与+XELOX群で14.6ヶ月(95%信頼区間:12.6~16.6ヶ月)に対して全身化学療法群は10.6ヶ月(95%信頼区間:2.4~18.8ヶ月)と、パクリタキセル腹腔内投与+XELOX群で死亡(OS)のリスクを56%(HR:0.44、95%信頼区間:0.26~0.74、P=0.002)減少した。また、1年全生存率(OS)はパクリタキセル腹腔内投与+XELOX群67.8%に対して全身化学療法群32.3%を示した(P<0.001)。

また、パクリタキセル腹腔内投与+XELOX群でconversion surgeryを実施した群(N=13人)における全生存期間(OS)中央値は24.2ヶ月(95%信頼区間:13.1~35.3ヶ月)に対してconversion surgeryを実施しなかった群12.5ヶ月(95%信頼区間:9.4~15.6ヶ月)を示した。また、1年全生存率(OS)はconversion surgeryを実施した群の84.6%に対してconversion surgeryを実施しなかった群で55.7%を示した。

conversion surgery:初回診断時には切除不能と診断されたが、手術療法以外の治療を行うことで病勢がコントロールされ、切除可能と診断され手術を行うこと

以上の第2相試験の結果よりDaryl Chia氏らは「腹膜転移を伴う胃がん患者に対するパクリタキセル腹腔内投与+XELOX併用療法は、臨床で期待のできる抗腫瘍効果を示し、良好な反応を示した患者においては手術も可能となるため、本患者の治療選択肢になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。

Outcomes of a phase II study of intraperitoneal paclitaxel plus systemic capecitabine and oxaliplatin (XELOX) for gastric cancer with peritoneal metastases.(2021 Gastrointestinal Cancers Symposium,Abstract No:165)

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