2023年4月26日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性固形がん患者に対するKRAS阻害薬アダグラシブ(MRTX1133)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相のKRYSTAL-1試験(NCT03785249)の結果がMayo ClinicのTanios S. Bekaii-Saab氏らにより公表された。
KRYSTAL-1試験は、複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性固形がん患者(N=63人)に対して1日2回アダグラシブ(MRTX1133)600mg単剤を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性を検証した第2相試験である。
なお、今回の試験では、既に有効性が示されているKRASG12C変異のある非小細胞肺がん(NSCLC)および大腸がん(CRC)患者は除かれている。
本試験のフォローアップ期間中央値16.8ヶ月時点における結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は35.1%(N=20人)、奏効の内訳は全て部分奏効(PR)であった。奏効を示したがん種には膵がんの33.3%(7/21人)、胆道がんの41.7%(N=5/12人)が含まれていた。副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は5.3ヶ月(95%信頼区間:2.8-7.3ヶ月)、無増悪生存期間(PFS)中央値は7.4ヶ月(95%信頼区間:5.3-8.6ヶ月)を示した。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は96.8%、その内グレード3もしくは4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は27.0%を示し、グレード5の治療関連有害事象(TRAE)は確認されず、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止も確認されなかった。
以上のKRYSTAL-1試験の結果よりMayo ClinicのTanios S. Bekaii-Saab氏らは「複数治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性固形がん患者に対するKRAS阻害薬アダグラシブ(MRTX1133)単剤療法は、膵がんを含め希少がんに対しても臨床的効果のある抗腫瘍効果を示しました」と結論を述べている。
Adagrasib in Advanced Solid Tumors Harboring a KRASG12C Mutation