(画像はリリースより)
さらに、この変異シグネチャーSig16が発生すると、びまん性胃がんに特徴的なドライバー遺伝子変異(RHOA遺伝子変異)が誘発され、がんの発症につながっている可能性が示唆された。
今回の研究結果をもとに、今後、詳細な発がんの機序を解明することで、予後不良とされるびまん型胃がんの予防につなげていきたい、と柴田氏はコメントした。
2つ目の研究成果は、胃がんにおけるドライバー遺伝子の網羅的な解析により、米国TCGA(The Cancer Genome Atlas)の過去の報告25個と比較しても多い、75個のドライバー遺伝子を同定したことである。
また、がん抑制遺伝子であるCDH1遺伝子のスプライシング異常が、びまん型胃がんに特徴的に見られた。CDH1は通常二量体として機能するが、そのどちらかが変異産物であると、もう一方の正常体の機能をも阻害してしまう(=ドミナントネガティブとして作用する)可能性も示されたと言う。
今回の解析において、すでに臨床で使用可能な治療薬がある症例は全体の約1割に留まったが、今回同定された遺伝子異常が新たな治療標的として有望である、と柴田氏は述べた。
3つ目の研究成果は、免疫療法のバイオマーカーの同定である。遺伝子変異数が多い胃がん症例の約7割において、免疫療法に重要とされている遺伝子群の異常が見つかった。また、既知の胃がんのドライバー遺伝子変異自体が、免疫抑制性の環境を作り出している可能性が示唆された。
この結果を受けて柴田氏は、特定の遺伝子異常と免疫状態との相関が明らかとなったことで、胃がんにおける免疫治療の新たなバイオマーカー探索に役立つものであることに言及した。
これらの研究結果は、予防や治療法開発にすぐにつながるものではないものの、更に研究を進めることにより、これまで原因不明であったびまん性胃がんの予防、更にはびまん性胃がんを含む胃がんの新たな治療薬やバイオマーカーの開発に貢献し得るものである、と柴田氏は期待を語った。
参考:国立がん研究センター プレスリリース



