院内がん登録データから見えてくるコロナ禍におけるがん診療の実態は?国立がん研究センターが院内がん登録2021年全国集計速報値を公表


  • [公開日]2022.12.13
  • [最終更新日]2022.12.13

12月9日、国立がん研究センターは、2021年1月1日から12月31日の1年間における院内がん登録の全国集計速報値を公表。同時に、同センターがん対策研究所が「2021年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況」と題した講演会を実施した。

冒頭のあいさつの中で、同センターがん対策研究所事業統括の若尾文彦氏は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、がん検診受診者の減少が叫ばれてきた背景に言及。同センターは昨年、2020 年における院内がん登録の全国集計報告書を公表しているが、更に偏りのない日本全国をできるだけ反映したデータを公表すべく、今回の発表に至ったとコメントした。

若尾氏は最後に、「今は新型コロナウイルスに対するワクチン接種や院内の感染対策がかなり進んでいる。がん検診は“不要不急”とは捉えずに、コロナ禍になる前と同様に進めていってほしい」とのメッセージであいさつを締めた。

続いてがん登録センター長の東尚弘氏が、院内がん登録の位置づけについて説明した。がん登録には「院内がん登録」「全国がん登録」の2種類がある。全国がん登録は理論上すべてのがん症例をカバーできるが、解析に時間がかかり、現時点ではコロナ禍以降のデータが出ていない。一方、今回解析に使った院内がん登録は、がん症例のカバー率は100%ではないものの、日本全国455施設約80万件の症例をカバーしており、比較的早く信頼性の高いデータを出すことができるという。また厚生労働省によると、院内がん登録に期待される効果のひとつとして、「当該(院内がん登録の)情報を基にしたがん統計等の算出等を行うことにより、 専門的ながん医療を提供する医療機関の実態把握に資すること」とされており、この項目に則ってコロナ禍という全国規模の変化の影響を調べるため、今回の解析を行ったとのことであった。

続いてがん登録センターの院内がん登録分析室の石井太祐氏が、解析結果を発表した。今回は、2021年1月1日から12月31日にがん診療連携拠点病院・小児がん拠点病院で診断された症例を対象に、2022年9月に集計したものである。

2020年にがんの診断・治療開始を経験した症例数は76万5044件で、新型コロナウイルス流行前の2か年平均値(79万8078件)と比べて4%減少したが、2021年には80万6589件まで戻った。

また検診発見例に関しては、2020年は過去2か年平均と比較して86.4%まで減少したが、2021年には98.8%に回復している。またがん検診推奨部位(胃・大腸・肺・乳房・子宮頸がん)に限ってみると、2020年には85.6%まで減少したが、2021年には97.2%まで回復したとのことだ。

病期別に見ると、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんでは2018 -19 年と比較して、 stage0/1 などの割合がやや減少の傾向が見られており、新型コロナウイルスの影響で早期がんの発見が減っている可能性が指摘された。

治療推移では、2020年における外科的治療/鏡視下治療・内視鏡治療が4-7%減少したが、2021年は回復傾向にある。特に胃がんと子宮頸がんにおける外科的治療/鏡視下治療実施割合の減少は、早期がんの発見の減少を反映している可能性が考察された。一方、膵がんにおいて化学療法の増加が見られたが、これは発見の遅れではなく、標準治療である術後補助化学療法の増加を反映していることが考えられるようだ。

これらの結果解析を踏まえ、石井氏は「2021年のがん登録数自体は2018-2019年平均と同程度であったが、登録数が年々増加してきた過去の傾向を考慮すると、まだ十分な数値とは言えない」と言う。新型コロナウイルスの予防策やワクチンなどが開発された今、がん検診や有病状時の受診などはこれまで通り実施していくことが大切だと強調した。

ただ一方で、新型コロナウイルスの影響が、より進行期での発見の上昇につながっているかどうかに関しては、今回の結果から結論づけるには時期尚早であるようだ。石井氏は、「進行期がんの上昇が懸念されていることは事実であるが、より正しい実態把握のためには、病期別登録数検診受診率・精密検査受診率と併せて注視していくことが必要である」と慎重に語った。またがん登録の数値は、患者側の受診行動の変化に加え、施設側の対応の変化などさまざまな因子の影響を受けるため、多面的に考えていく必要性に言及し、講演会を締めくくった。

参考:
国立がん研究センター プレスリリース

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