2022年12月10日~13日に米ニューオーリンズにて、第64回米国血液学会が開催され、Session 634「Myeloproliferative Syndromes」の中で、骨髄線維症を対象とした治験薬TP-3654の予備的なデータが発表された。
骨髄線維症(MF)は、骨髄の線維化、造血不全、脾臓の腫大などさまざまな症状をきたす疾患である。がんの活性化に寄与することが知られるPIM-1は、JAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素により発現が制御されているが、MFの造血細胞ではPIM-1の発現が著しく上昇しており、MFの治療標的である可能性が示唆されている。
TP-3654は、高選択的な経口PIM-1キナーゼ阻害剤で、単独またはルキソリチニブ(製品名:ジャカビ)と組み合わせることにより、JAKの点突然変異JAK2V617Fや、MFの原因のひとつであるMPL遺伝子の点突然変異W515LをもつマウスMFモデルにおいて、脾臓サイズと骨髄の線維化を減少させると報告されていた(Dutta、2021年)。このような背景の下、MF患者を対象にTP-3654単剤療法の安全性と有効性を評価する第I/II相試験(NCT04176198)が計画された。
主な適格基準は、原発性または二次性のMF、DIPSS(Dynamic International Prognostic Scoring Systemの略。原発性骨髄線維症(PMF)の予後予測に用いられる3種類の国際予後分類のひとつ)において中リスクまたは高リスク、JAK阻害剤による治療歴あり、または治療不適格、グレード2以上の骨髄線維症、血小板数25x109/L以上、絶対好中球数1x109/L以上、脾腫、2つ以上の測定可能病変あり、であった。
本試験では、最大耐量および/または推奨第II相用量を特定し、末梢血とBM生検で臨床活性(脾臓容積減少[SVR]、全身症状スコア[TSS]改善、BM線維減少)、安全性、薬物動態および薬力学マーカーを評価することを目的とした。
2022年7月11日現在、5つの用量レベルで9名の患者が登録されている。ベースライン時の年齢中央値は71歳(範囲:61~77)、脾臓容積中央値は2,231cm3(範囲:857~4,407)、血小板数中央値は120x109/L(範囲68~237)、ヘモグロビン中央値は10.1g/dL(範囲5.9~13.7)、輸血依存の患者は2例であった。全例が少なくとも1種類のJAK阻害剤による前治療を受けていた。
20%を超える患者に発生した治療関連有害事象(TRAE)には、軽度から中等度の吐き気、嘔吐、下痢が含まれていたが、グレード3以上の有害事象は、嘔吐が1例のみであった。血液毒性の報告はなく、副作用による投与中止も見られなかった。
評価可能な8例中6例でSVRが認められた。また、評価可能な8例中7例で症状の改善が認められた。ベースライン時およびTP-3654投与中に採取した血漿サンプルでサイトカインのパネルを評価したところ、TP-3654投与後、繊維化に関連するサイトカイン(TGF-b、IL-18、VEGF、RANTES、MMP-9、TIMP-1)の減少が観察された。サイトカインの減少が大きい患者ほど、総症状スコアの減少が大きいという相関も見られた。
今回の用量漸増試験(忍容性のデータ)における予備的データは、JAK阻害剤による前治療歴のある患者において、TP-3654単剤投与により、脾臓容積減少、症状改善、サイトカイン減少という有望な臨床活性の兆候が見られた。また、TP-3654は骨髄抑制性の有害事象が少なく、忍容性が良好であった。
これまでの非臨床試験で得られた知見と今回の臨床試験の安全性・有効性の予備的データは、TP-3654がJAK阻害剤との併用に有望なパートナーとして開発を進めていくことを支持している。
関連リンク:
240 Preliminary Data from the Phase I/II Study of TP-3654, a Selective Oral PIM1 Kinase Inhibitor, in Patients with Myelofibrosis Previously Treated with or Ineligible for JAK Inhibitor Therapy
SUMITOMO PHARMA ONCOLOGY TO PRESENT PRELIMINARY CLINICAL DATA EVALUATING INVESTIGATIONAL AGENT TP-3654 AT THE 64TH ASH ANNUAL MEETING & EXPOSITION
あなたは医師ですか。