オリゴ転移に対する最適な治療戦略は?JSCO 2022


  • [公開日]2022.11.08
  • [最終更新日]2022.11.01

10月20~22日に第60回日本癌治療学会学術集会(JSCO 2022)が、神戸コンベンションセンターにて開催された。現地を主体としたハイブリッド形式であったが、当日多くの参加者が現地に集まった。

今回、「オリゴ転移にどう対応するか?」と題した2つのセッション(オンコロジーフォーラム5、領域横断的ワークショップ7)が組まれていた。その一部を紹介する。

オリゴ転移は、初めてひとつのセッションとして大きく取り上げられた2020年のJSCOが転換期となり、日本でも治療戦略の議論が注目されている。

JSCO2020でも演者を務めた山梨大学医学部放射線科の大西洋先生は、オリゴ転移に対する定位放射線治療(SBRT)について、領域横断的ワークショップ7で発表していた。

がん治療における放射線は、「アブスコパル効果(遠くに狙いを定めるという意味の造語)」として広く期待されてきた治療である。実際、手術や抗がん剤と比較し、放射線が最もアブスコパル効果を誘導できることが基礎的に示されている。

オリゴ転移に対するSBRTは、日本では2020年に保険適用された。「当時は、患者や医師(特に放射線治療医)の強い期待に応えるためのエビデンスが弱かったが、現在はデータが蓄積してきた」と大西先生。非小細胞肺がん、大腸がん、腎がんなど多くのがんのガイドライン上にも、転移に対するSBRTが提示されている。

更に近年、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法の開発も進んでおり、多くの治験が実施されているようだ(SBRTとICIを併用するメリットは、上述のアブスコパル効果の観点から説明されている。つまり、放射線により壊れた腫瘍からがん抗原が放出→T細胞が抗原を認識し活性化が起きるため、ICIによる免疫賦活化との相性が良いとされている)。

最後に、実際に膵がんへの照射で肺へのオリゴ転移巣も縮小した成功症例の経験も提示され、オリゴ転移に対するSBRTの効果を実感していることを強調。「パラダイムシフトからニューノーマルの段階にきている。放射線治療医が、オリゴ転移の選択肢としてのSBRTを他科の先生にアピールし、SBRTの恩恵を患者さんに届けてほしい」と締めくくった。

もう一つのセッション「オンコロジーフォーラム5」の中でも、オリゴ転移に対する放射線治療の出番がもう少し見直されても良いのではないか、という意見が出ており、オリゴ転移に対する治療選択は今後も変わっていく余地が示された。

オリゴ転移は、適切な局所治療により予後が大きく改善する余地がある一方、腫瘍の数や場所や出てくる時期など様々であり、個々に応じた適切なレジメンを適切なタイミングで実施することが非常に重要になってくる。

実臨床下で多くの議論と実績が積み重ねられ、日本におけるオリゴ転移のスタンダードを作っていくことが重要である。

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