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日本で続くHPVワクチンへの躊躇いに警告、防げたかもしれない子宮頸がん死は現時点で約5000人

[公開日] 2020.02.20[最終更新日] 2024.11.22

目次

2010年、日本で12歳から16歳の女性を対象に公費補助によるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンプログラムが始まった。当初、接種率が70%を超えるまで普及したが、2013年6月に複数の有害事象が報告されたことを受けて以来、国は積極的な推奨を取り止めている。それらの有害事象は、HPVワクチンとの因果関係が不明とされているにもかかわらず、多くのメディアがニュースとして取り上げ広く報道した。それ以降、同ワクチンの接種率は1%未満に落ち込み、現在でもその低迷状態は続いている。

世界保健機関(WHO)は2018年5月、事務局長名で子宮頸がんの撲滅に向けた行動を全世界に呼びかける声明を発布し、2019年1月には、必要なワクチンへの躊躇、忌避の問題をグローバルヘルスにおける脅威のトップ10の1つに選んだ。

オーストラリアCancer Councilがん研究部門のKaren Canfell氏らの研究グループは、HPVワクチン接種を躊躇すること、あるいは忌避することで生じる危機をHPVワクチンクライシスと呼び、その具体的な影響を定量化した。すなわち、子宮頸がんの罹患や子宮頸がん死といった公衆衛生上の損失、また、接種率が回復した場合の公衆衛生上の利益を数値化した。同研究成果は2020年2月10日、The Lancet Public Healthに掲載された。

ワクチン接種率低下後の約6年間で患者・死亡者数は?

1994年から2007年に生まれた女性集団において、2013年以来のワクチンクライシスが継続した結果、当初の接種率70%程度を保っていた場合と比較すると、現時点のシミュレーションでは、生涯のうち子宮頸がんになる患者数は2万4600人から2万7300人増加し、子宮頸がんを原因とする死亡者数は5000人から5700人増加したと算出された。そして、このワクチンクライシスが今後も継続すれば、子宮頸がんによる死亡者数が毎年700人から800人ずつ追加されていくことになる。

2020年にワクチン接種率が回復する場合、回復しない場合

一方、当初のワクチンプログラムに参加したが3回の接種計画を完了しなかった途中離脱者のキャッチアップも含めた上で、2020年に接種率が回復すると仮定するならば、1万4800人から1万6200人の子宮頸がんが予防でき、3000人から3400人の死亡を防ぐことができると試算された。

2020年に接種率が回復しなかった場合には、2020年に12歳になる女性集団に限定して試算すると、生涯のうちで子宮頸がんになる患者数は3400人から3800人増加し、死亡者数は700人から800人増加する。今後もワクチンクライシスが継続すれば、将来の50年間(2020年から2069年)に回避可能な死亡者数は9300人から1万800人になる可能性が示された。

研究グループは上記の算出値について考察し、HPVワクチンの接種率が速やかに回復すれば、これらのうちのかなりの数の子宮頸がんとその死亡を防ぐことができるとしている。だが、接種率が回復しても、子宮頸がんスクリーニング検査の優先度は変わらず、特に、接種対象年齢にもかかわらず2013年以降の期間に接種しなかった女性や、ワクチン普及前の高い年齢層の女性については、スクリーニング検査の重要度は依然高いとしている。

長期間にわたる将来シミュレーションの信頼性は?

研究グループは今回、「Policy1-Cervix」と呼ばれるモデル解析のプラットフォームを活用し、日本におけるHPV感染、HPVスクリーニング検査、子宮頸がんの発生率と死亡率に適用した。日本で蓄積されている実存データを土台に、ワクチンクライシスの背景に照らし、1994年から2007年に生まれた女性集団での子宮頸がんをシミュレートし、患者数、ならびに死亡者数を算出した。

なお、Policy1-CervixはHPVや子宮頸がんに関する幅広い動的傾向を検証し得る解析基盤で、オーストラリアやニュージーランド、英国、および中国で様々な条件で活用され、それらの解析結果が政策決定につながる情報として利用されてきた実績がある。

HPVの感染により子宮頸部の浸潤がんを発症するかどうか、死亡するかどうか、将来数十年にわたる長期間の影響を予測することは難しく、しかも、今回のようなワクチンクライシスによる影響を完全に把握することはできない。だが、本研究で用いた数学的モデリングによる疾病シミュレーションは、一定の信頼性をもって将来の予測を可能にする。その上で、現在のワクチン接種率の低迷が2020年以降も続いた場合、または2020年からそれ以降の接種率が70%程度まで回復した場合、というように大きく分けてシミュレートした。さらに、急速に回復する場合、ゆっくり回復する場合、3回の接種計画の途中で離脱してしまった女性の半数をキャッチアップした場合なども条件として取り入れ、5通りの筋書きを想定し、それぞれ詳細に数値化している。

今回の研究にあたり、研究グループは「HPV vaccine」、「hesitancy」、「modeling」といったキーワードを用い、2007年1月1日から2019年8月8日までに英語で書かれた文献をPubMedで検索した。その結果、多くの対象者がワクチンを躊躇したことによる接種率の低下、それと子宮がんの罹患数や死亡者数との直接的な関係、そしてその影響や公衆衛生上の危機を予測、数値化した研究は存在しなかったとしている。また、日本でもこのHPVワクチンクライシスの影響を測定した調査や研究はこれまでのところないという。

EV-101: A Phase I Study of Single-Agent Enfortumab Vedotin in Patients With Nectin-4–Positive Solid Tumors, Including Metastatic Urothelial Carcinoma(J Clin Oncol. 2020 Feb 7:JCO1902044. doi: 10.1200/JCO.19.02044.)
ニュース 子宮頸がん HPV副反応

医療ライター 川又 総江

国内製薬企業研究所研究員、大学医学部研究室助手を経てフリーのメディカルライターに転身。医薬・バイオ関連出版社等の文献翻訳、医療記事作成を執筆すること20年。

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