・抗生剤、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の影響をプール解析
・全生存期間、無増悪生存期間に悪影響を与える可能性が示唆された
2020年1月16日、医学誌『Annals of Oncology』にて、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)治療中の進行性非小細胞肺がん患者に対する抗生剤、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の影響をプール解析した試験の結果がLausanne University Hospital in SwitzerlandのMyriam Chalabi氏らにより公表された。
本プール解析は、治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者に対してテセントリク単剤療法を投与する群(N=757人)、またはドセタキセル単剤療法を投与する群(N=755人)に無作為に振り分けられた臨床試験である第2相のPOPLAR試験(NCT01903993)、第3相のOAK試験(NCT02008227)を対象にして、抗生剤またはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用が無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)に与える影響を検証した試験である。
なお、本試験の対象患者の内、抗生剤が投与されていた患者はテセントリク群22.3%(N=169人)、ドセタキセル群26.8%(N=202人)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されていた患者はテセントリク群30.9%(N=234人)、ドセタキセル群34.4%(N=260人)である。
本試験のフォローアップ期間中央値19.2ヶ月時点における結果は下記の通りである。全患者を対象にした多変量解析では、抗生剤が投与されている患者の死亡(OS)リスクは20%増加(HR:1.20,95%信頼区間:1.04–1.39)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されている患者の死亡(OS)リスクは26%増加(HR:1.26,95%信頼区間:1.10–1.44)した。
テセントリク群を対象にした多変量解析では、抗生剤が投与されている患者の全生存期間(OS)中央値は8.5ヶ月に対して投与されていない患者14.1ヶ月、抗生剤が投与されている患者群で死亡(OS)のリスク32%増加(HR:1.32,95%信頼区間:1.06–1.63, P=0.01)した。
また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されている患者の全生存期間(OS)中央値は9.6ヶ月に対して投与されていない患者14.5ヶ月、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されている患者群で死亡(OS)のリスク45%増加(HR:1.45,95%信頼区間:1.20–1.75, P=0.0001)した。
なお、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されている患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は1.9ヶ月に対して投与されていない患者2.8ヶ月、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されている患者群で病勢進行または死亡(PFS)のリスク30%増加(HR:1.30,95%信頼区間:1.10−1.53, P=0.001)した。
一方、ドセタキセル群を対象にした多変量解析では、抗生剤が投与されている患者の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されている患者の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)において臨床的意義のある関連性が確認されなかった。
以上のプール解析の結果よりLausanne University Hospital in Switzerland・Myriam Chalabi氏らは以下のように結論を述べている。”抗PD-L1抗体テセントリク治療中の進行性非小細胞肺がん患者に対する抗生剤、プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)に悪影響を与える可能性が示唆されました。”
https://oncologypro.esmo.org/oncology-news/daily-news/ppis-antibiotic-use-linked-to-atezolizumab-efficacy