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栄養とリハビリテーションで抗がん剤治療患者のアウトカムを改善するには

[公開日] 2019.08.07[最終更新日] 2019.08.07

目次

7月18〜20日に第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2019)が、国立京都国際会館・グランドプリンスホテル京都にて開催された。 過去最高の7,600名以上が参加した、JSMO2019の中から会長企画シンポジウム16「栄養とリハビリテーションで抗がん剤治療患者のアウトカムを改善するには」の講演の内容をレポートする。 [司会] 櫻井 卓郎(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科) [司会] 齋藤 光江(順天堂大学 医学部乳腺腫瘍学講座)

リハビリと栄養

PSY16-1 [演者] 牧田 明有美(西埼玉中央病院 国立がん研究センター中央病院 管理栄養室) 牧田氏は、がん病態栄養専門管理栄養士。全国には約700人のがん病態栄養専門管理栄養士がおり、がんの栄養管理・栄養療法に関する実践に即した高度な知識と技術を習得し、栄養に関する専門職として、よりがんに特化した管理栄養士の育成とチーム医療への連携強化に努めている。 がん治療過程でのがん患者の栄養状態は様々であり、治療効果やQOL、延命に影響する。化学療法の結果、食欲不振、悪心嘔吐、味覚異常、口腔粘膜障害、下痢便秘等の有害事象が頻発することがあり、食事摂取量の低下を引き起こし体重減少に至ることがある。また、治療中に発生する骨格筋量低下から引き起こされるサルコペニアも予後に影響することがわかってきている。 これらの背景にから、リハビリテーション栄養(リハ栄養)はがん患者の治療において重要なキーワードとなっている。 リハ栄養とは、栄養状態も含めて国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health, ICF)で評価を行ったうえで、障害者や高齢者の機能、活動、参加を最大限発揮できるような栄養管理を行うことである。臨床現場においては実際に取り組んでいる施設はまだまだ少ない。 今後、これまでのがん治療の過程に、リハ栄養を取り込んでいくことで、治療の効果やQOL、そして延命に寄与していくことが期待できる。

がん患者における身体活動量を維持改善するために必要なこと-進行がんを中心に-

PSY16-2 [演者] 岡山 太郎(静岡県立静岡がんセンター リハビリテーション科) 身体活動量(Physical Activity:PA)の重要性が話題となっている。全死亡の6~9%が身体不活動によるものと報告されており、これは、喫煙や肥満に匹敵するリスクである。しかし現状のがんの臨床現場において、禁煙や減量の指導は行うが、PAについて指導されることは非常に少ない。 PAの知識は低く、加齢と身体機能の関連など、治療に重要なファクターである認知も低い。さらに、PAの評価法が、解析法などがいまだ検討段階であることもこの要因である。 報告によると、進行がん患者は診断時、同年代の健常者に比べPAが低下しており、治療目的の入院や末梢神経障害などの有害事象によってもPAが低下する。また、下肢の骨格筋量および筋力がPAと大きく関わっていることが報告されている。 そのため、がん治療の早期より、下肢筋力およびPAを維持改善するための指導を外来化学療法や入院中に取り入れていることが重要である。

化学療法有害事象と化学療法後の患者に対する在宅支援

PSY16-3 [演者] 高田 明子(信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部) がん化学療法を施行予定の患者の治療前からリハビリテーションスタッフの介入が実施されている。抗がん剤投与中や投与開始後48時間以内にもリハビリテーションを実施している。しかし、化学療法や有害事象に関する知識は低いのが現状である。 高田氏らは積極的に化学療法による末梢神経障害に対するリハビリテーション、及び在宅への支援も実施している。また、リハビリテーションスタッフに有用と思われる抗がん剤曝露対策を実施している。

骨転移患者のリハビリテーションにおける現状と課題~安静と活動について作業療法の視点から~

PSY16-4  [演者] 阿瀬 寛幸(順天堂大学医学部附属順天堂医院 リハビリテーション室) がん患者における骨転移は痛み、神経症状、骨折を呈しQOLや活動に影響を及ぼす。そのため、早期発見、早期介入が重要である。しかし、身体保護により廃用を招くこともある。よって安静と同時に適切な活動量や動作の方法を日々多職種で検討することは重要である。

造血幹細胞移植患者の身体活動量を維持改善することに対するセラピストの現状と課題

PSY16-5 [演者] 森下 慎一郎(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科) 造血幹細胞移植は大量の化学療法や放射線治療を行うため、血液がん患者の体力やQOLが大きく低下することが知られている。造血幹細胞移植患者は移植前後の期間、数ヶ月間無菌室に滞在するため身体活動量が低下しやすい。そのため、身体活動量を維持、体力低下を防ぐリハビリテーションが非常に重要となる。 森下氏らは造血幹細胞移植患者の身体活動量を維持改善することに対するセラピストの現状と課題について検討している。
ニュース がん一般

高橋さくら

米国州立大学生物学科卒後、国内の臨床検査会社、大学病院研究室で研究開発の後、製薬会社でがん関連製剤の学術情報・マーケティング担当。その後CROにてがん関連治験の立ち上げ業務を経験。また、福祉系大学に社会人入学卒業し、社会福祉士、精神保健福祉士取得。 日本臨床腫瘍学会会員、日本癌治療学会員

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