リムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性卵巣がんの初回治療後の維持療法として適応拡大


  • [公開日]2019.06.24
  • [最終更新日]2019.06.25

2019年6月18日、アストラゼネカ株式会社(以下「アストラゼネカ」)とMSD株式会社(以下「MSD」)は、オラパリブ(商品名:「リムパーザ錠」、以下「リムパーザ」)に関して、アストラゼネカが「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」を適応症とする製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。

プラチナ製剤ベースの初回化学療法で奏効が維持されているBRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がん(FIGO分類III期またはIV期)患者を対象とした国際共同第3相試験(SOLO1試験)の結果に基づいて承認された。本試験で、リムパーザはプラセボに対し、主要評価項目である無増悪生存期間PFS)の統計学的有意かつ臨床的に意義のある延長を示した(ハザード比:0.30 [95%信頼区間:0.23-0.41] p<0.0001)。またPFS中央値は、リムパーザ群は未到達、プラセボ群は13.8カ月だった。 リムパーザは2018年1月に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」の承認を取得し、同年7月には「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」の治療薬として適応を拡大している。

リムパーザについて

オラパリブ(リムパーサ)は、ファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子の変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する腫瘍細胞において、DNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の分子標的治療薬。リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、DNAの修復を阻止することで、DNA二本鎖切断を起こし、がん細胞を死滅させる。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のがんの種類において開発が進行中である。

海外では、米国において、「BRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」「プラチナ製剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」「少なくとも3レジメンの化学療法による治療歴を有する生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がん」「生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がん」の適応症で承認されています。また欧州では、「BRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」「プラチナ製剤感受性の再発卵巣がん」「生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の局所進行または転移性乳がん」の適応症で承認を受けている。

リムパーザの有効性と安全性

本承認は、プラチナ製剤ベースの化学療法で奏効が維持されているBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんにおけるリムパーザの無作為化試験(SOLO1試験)の結果に基づいている。

安全性

本試験で確認された安全性プロファイルは、過去のリムパーザ単剤療法で報告された内容と一貫している。リムパーザが投与された患者のうち94.2%(245/260例)に副作用が認められたが、その多くの重症度は軽度または中等度であり、休薬や減量によって管理可能なものであった。主な副作用は、悪心(70.4%)、貧血(36.2%)、疲労(33.1%)、嘔吐(30.4%)、味覚異常(24.6%)等であった。

BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2は損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞内遺伝子の安定性維持に重要な役割を果たす。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されないまたは正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性がある。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子変化を起こす可能性が高くなる。

BRCA遺伝子変異検査について
BRCA遺伝子変異状況の確認は、血液検体を用いた米国ミリアド・ジェネティックス社のBRACAnalysis診断システムによって行う。BRACAnalysis診断システムは、リムパーザの「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」の適応判定を補助するコンパニオン診断として、2019年2月28日に適応を拡大し、2019年6月1日に保険償還された。

参照元:アストラゼネカ株式会社プレスルーム

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