ノバルティス、再発・難治性DLBCLの成人患者さんを対象とした「CTL019」のJULIET試験で1年を超える奏効の持続を示す


  • [公開日]2018.07.04
  • [最終更新日]2019.03.15

2018年6月16日、スイス・バーゼル発 – ノバルティスは、再発・難治性(r/r)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の成人患者さんにCTL019(米国における製品名:「Kymriah®」、国際一般名: tisagenlecleucel)を投与した場合に持続的な奏効が達成可能であることを示すピボタルJULIET臨床試験の14カ月の結果を発表した。

3カ月以上のフォローアップ、または早期中止となった患者さん93例において、全奏効率ORR)は52%(95%信頼区間[CI]、41%~62%)であった1

患者さんの40%が完全奏効(CR)、12%が部分奏効(PR)を達成した。

3カ月時点でCRを達成した患者さんのうち、83%が12カ月時点でもCRを維持し、奏効の持続期間の中央値は未到達であったことから、奏効の持続性が示された。

これらのデータは、第23回欧州血液学会(EHA)年次総会において口頭発表された(アブストラクト# S799;6月16日土曜日11:30AM CEST)1

重要かつ革新的な治療選択肢

最新のJULIET試験データ解析の筆頭著者であるドイツ、ケルン大学病院内科(Department of Internal Medicine, University Hospital of Cologne)のピーター・ボルヒマン医師(Peter Borchmann, MD)は次のように述べている。
「かつては予後不良であった進行中悪性度リンパ腫の患者さんが、今はたった1回の治療で持続的寛解に至る可能性があります。これは、これまで想像もできなかった革新的な進歩です。JULIET試験の14カ月のデータにより、私たちは、CTL019が再発・難治性DLBCL患者さんの転帰を再定義する必要があるほどの変化だととらえています」。

JULIET試験では、患者さんが最初に奏効(n=48)を得てから12カ月後の無再発率は65%(95% CI、49%~78%)であった。

実際、PRを達成した患者さんの54%(13/24)がCRに改善し、このデータには9~12カ月の間に改善した2例が含まれている。

CRを達成した患者さんの全生存期間OS)の中央値は未到達であった(95% CI、17.9~NE)。

輸注を受けた全患者さん(n=111)の12カ月時点のOS率は49%、OSの中央値は11.7カ月であった(95% CI、6.6~NE)。

輸注からデータカットオフまでの期間の中央値は14カ月で、輸注からの最長期間は23カ月であった。

データカットオフ時点で、CTL019投与後に奏効を示し、その後に幹細胞移植に進んだ患者さんはいなかった1

ノバルティス・オンコロジー事業部グローバル医薬品開発の責任者であるサミット・ヒラワット医師(Samit Hirawat, MD)は次のように述べている。

「JULIET試験のこれらの結果は、進行したDLBCL患者さんにおいて、CTL019が輸注後1年以上にわたり奏効が持続する強力な有効性と、予測可能で一貫した安全性プロファイルを有することを示し続けています。ノバルティスは、この重要かつ革新的な治療選択肢を世界中のより多くの患者さんにお届けすることに全力で取り組みます」。

CTL019の輸注後8週間以内に、サイトカイン放出症候群CRS)の厳密な評価尺度であるPennグレーディングスケールで定義されたグレード3/4のCRSが患者さんの22%で報告された(14%はグレード3、8%はグレード4)。

患者さんの15%において、CRS治療のためにトシリズマブが投与された。

これにはグレード2のCRS患者さんのうちの3%、グレード3のCRS患者さんのうちの50%が含まれている。

CRSはCAR-T細胞医療の既知の合併症で、遺伝子改変された細胞が患者さんの体内で活性化されたときに起こる可能性がある。

多施設共同国際試験の中で、CRSは、事前にCRS治療アルゴリズム実施に関する施設教育を行うことで、管理された。

脳浮腫による死亡は報告されなかった1

本解析で、患者さんの12%にグレード3/4の神経学的有害事象が認められたが、これらは支持療法によって管理された。

28日以上続くグレード3/4の血球減少症、グレード3/4の感染症、グレード3/4の発熱性好中球減少症がそれぞれ患者さんの32%、20%、15%で認められた1

ペンシルベニア大学(Penn)ペレルマン医学大学院の慢性リンパ性白血病/リンパ腫臨床治療研究のロバート・マルガリータ・ルイ-ドレフュス教授で、アブラムソンがんセンターのリンパ腫プログラム代表も務めるステファン・J・シュスター医師(Stephen J. Schuster, MD)は、次のように述べている。

「多施設共同国際試験であるJULIET試験におけるDLBCL患者さんの追跡調査において、CTL019の輸注後1年以上も奏効が維持されていることを大変うれしく思います。この結果は、ペンシルベニア大学で行われたパイロット試験で見られた持続的な奏効と一致しています。引き続き、寛解の状態を維持する患者さんの経過を観察し続けることを楽しみにしています」。

ベースラインの臨床および検査パラメーター、用量および細胞動態との関係も含めて、重度のCRSおよび神経学的事象を詳細に特徴付けて予測するための解析も発表された。

輸注前に50例の患者さんが治験を中止し、その大半は疾患の急激な増悪または臨床状態の悪化が理由であった。
これは、r/r DLBCLの急性かつ進行性の性質を反映している。
登録した患者さん165例のうち12例(7.3%)は、十分な量のCAR-T細胞を製造できなかったために輸注を受けることができなかった。

2018年5月に、JULIET試験のデータに基づいて、DLBCL、高悪性度B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫から生じたDLBCLなど、2ライン以上の全身療法を行った後のr/r 大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者さんの治療を適応として、CTL019は米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得した。

CTL019は、中枢神経系原発リンパ腫患者さんの治療としての承認は取得していない。

欧州医薬品庁EMA)は、r/r B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者さんならびにr/r DLBCLの成人患者さんの治療に関して、CTL019の販売承認申請(MAA)を評価中である。

日本では2018年4月に、25歳以下の再発・難治性ALL、および成人の再発・難治性DLBCLの治療を対象として、製造販売承認申請を行なった。

最新のJULIET試験

JULIET試験は、r/r DLBCL成人患者さんを対象として初めて行われたCTL019の多施設共同国際登録試験である。

ペンシルベニア大学の研究者らが主導するJULIET試験は、DLBCLにおけるCAR-T細胞医療を評価するために、最大かつ唯一、世界規模で行われた治験で、米国、カナダ、オーストラリア、日本、およびオーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、オランダを含む欧州全域にわたる10カ国27施設から患者さんを登録した。

2012年に、ノバルティスとペンシルベニア大学は、がん治療を探求しCTL019を含むCAR-T細胞医療の研究・開発を進め製品化するための国際的な協力契約を結んだ。

DLBCLについて

DLBCLはリンパ系のがんである非ホジキンリンパ腫(NHL)の最もよく見られる病型で、世界的に見てNHLの全症例の最大で40%を占める2

2016年には米国で推定27,650人の患者さんが新たにDLBCLと診断された3

欧州におけるDLBCLの年間の罹患率は10万人あたり約3.8人で、罹患率は年齢とともに増加し、欧州の地域によって著しく異なっている4

DLBCL患者さんの約3分の1は一次治療後に再発している4

DLBCLと診断された患者さんのうち、約10%は難治性で、r/r DLBCLの患者さんの約75%はASCTに適さない2,5

再発した患者さんや初期治療に反応を示さない患者さんでは、持続的な奏効が得られる治療選択肢は限られており、難治性(自家造血幹細胞移植後の早期再発を含む)DLBCLの患者さんの平均余命の中央値が約6カ月という報告がある6

CTL019の製造について

CTL019は、ニュージャージー州モリスプレーンズにあるノバルティスの施設で、患者さん自身の細胞を使って個々の患者さんにあわせて製造される。

ノバルティスは、世界規模で、個別化された治療法に対応できる包括的で信頼性の高い製造・供給チェーンの基盤を設計している。

この製造プロセスでは、患者さんから採取・分離した白血球細胞を凍結保存することで、世界中で治療を担当する医師や医療機関が一人ひとりの患者さんの状態に基づいてCTL019の治療を柔軟に開始できるようにしている。
ノバルティスはCAR-T製造における豊富な経験から、製品の再現性が証明されている。

ノバルティスは11カ国300人以上の患者さんにCAR-T細胞を製造してきた。

CTL019(tisagenlecleucel)に関する米国の重要な安全性情報

CTL019は、サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性など、重症または生命を脅かす副作用を誘発することがある。

CRSの患者さんは、呼吸困難、発熱(100.4°F/38°C以上)、悪寒/悪寒による震え、重症の悪心、嘔吐および下痢、重症の筋肉痛または関節痛、重度の低血圧またはめまい/ふらつきなどの症状を起こすことがある。

CRSのために入院を余儀なくされたり、他の薬での治療が行われたりすることがある。

神経毒性を発症した患者さんでは、意識レベルの変化や低下、頭痛、せん妄、混乱、動揺、不安、発作、言語能力や理解力の低下、平衡感覚障害などの症状が生じることがある。

CRSや神経毒性の兆候および症状が現れた場合は直ちに担当医師に連絡するか、救急医療施設を受診するよう患者さんに助言する必要がある。

CRSおよび神経毒性のリスクがあることから、CTL019 REMSと呼ばれるリスク評価および軽減戦略(REMS)に基づく限定的なプログラムを通してのみ、CTL019は投与される。

CTL019投与後に、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応が起こる場合がある。

CTL019の投与後に、生命を脅かす感染症のリスクが高まり、死に至ることがある。

発熱、悪寒、または感染症の兆候や症状が現れたら、直ちに担当医師に連絡するよう患者さんに助言する必要がある。

1種類以上の血液細胞(赤血球、白血球、または血小板)の数が少なくなる、血球減少(血球減少症)が長期的に起こる場合がある。

CTL019投与後は、担当医師が血液検査を行ってすべての血球数を確認する。

発熱、疲労、あざまたは出血が現れたら、直ちに担当医師に報告するよう患者さんに助言する必要がある。

血液中の免疫グロブリン(抗体)値が低く感染のリスクが上昇する、低ガンマグロブリン血症を起こす場合がある。

CTL019投与後に低ガンマグロブリン血症の発生が予想されるため、CTL019投与後は無期限に、免疫グロブリンの補充が必要になることがある。

生ワクチンの接種を受ける患者さんは、接種の前にCTL019による治療を受けていることを医師に伝える必要がある。

二次がんやがんの再発の可能性があるため、CTL019による治療後は、医師が生涯にわたって患者さんを診察することになる。

治療により、眠気、混乱、虚弱、めまい、発作など、記憶および身体調節に一時的な問題が生じる場合があるため、患者さんはCTL019の投与後8週間は、運転、重機の操作、あるいは危険な活動は避ける。

CTL019の最も一般的な副作用には呼吸困難、発熱(100.4°F/38°C以上)、悪寒/悪寒による震え、混乱、重症の悪心、嘔吐および下痢、重症の筋肉痛または関節痛、重度の低血圧、めまい/ふらつき、頭痛などがある。
ただし、可能性のあるCTL019の副作用はこれがすべてではない。

患者さんは医師に副作用を報告し、医師に助言を求める必要がある。

女性患者さんに対してCTL019の投与を開始する前に、医師は妊娠検査を行なう。

妊娠または授乳中の女性におけるCTL019の使用に関しては情報がないため、妊娠・授乳中の女性に対するCTL019の投与は推奨されていない。

患者さんは避妊と妊娠について医師に相談が必要である。

患者さんは、医療用医薬品と一般用医薬品、ビタミン剤、ハーブサプリメントを含め、服用しているすべての薬剤について医師に報告する必要がある。

CTL019の投与後は、市販のHIV検査で偽陽性になる可能性があることを患者さんに助言する必要がある。

またCTL019投与後は、血液、臓器、組織および細胞を移植用に提供しないよう患者さんに助言する必要がある。

参照:ノルバティスファーマ株式会社 プレスリリース

参考文献

1.Borchmann P., Tam CS., Jager U., et al. An updated analysis of JULIET, a global pivotal Phase 2 trial of tisagenlecleucel in adult patients with relapsed or refractory (r/r) diffuse large b-cell lymphoma (DLBCL) [abstract]. In: The 23rd Congress of EHA.; June 14-17; Stockholm, Sweden.
2.World Health Organization. Diffuse large B-cell lymphoma. Review of cancer medicines on the WHO list of essential medicines. Available at http://www.who.int/selection_medicines/committees/expert/20/applications/DiffuseLargeBCellLymphoma.pdf. Accessed June 2018.
3.Teras, L., et al. 2016 US lymphoid malignancy statistics by World Health Organization subtypes. CA Cancer J Clin 2016;66:443–459. https://doi.org/10.3322/caac.21357. Accessed June 2018.
4.Tilly, H., et al. Diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL): ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Annals of Oncology, Volume 26, Issue suppl_5, 1 September 2015, Pages v116–v125, https://doi.org/10.1093/annonc/mdv304. Accessed June 2018.
5.Raut, L., Chakrabarti, P. “Management of relapsed-refractory diffuse large B cell lymphoma.” South Asian J Can, 2014 Jan-Mar; 3(1): 66-70. Accessed June 2018.
6.Crump M, et al. “Outcomes in refractory diffuse large B-cell lymphoma: results from the international SCHOLAR- 1 study”, Blood. 2017 Oct 19;130(16):1800-1808. Available on https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28774879. Accessed June 2018.

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