ノバルティスの「タフィンラー」「メキニスト」併用療法、国内における適応拡大承認により、BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫の術後補助療法として使用可能に


  • [公開日]2018.07.03
  • [最終更新日]2019.03.15

ノバルティス ファーマ株式会社は、2018年7月2日、「タフィンラー®カプセル50mg・75mg」(一般名:ダブラフェニブメシル酸塩、以下「タフィンラー」)および「メキニスト®錠0.5mg・2mg」(一般名:トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物、以下「メキニスト」)の併用療法について、BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫の術後補助療法に関する効能又は効果の追加承認を取得した。

「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫を効能又は効果として、2016年3月に承認を取得しているが、この度、効能又は効果を「BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫」として承認されたことで、根治切除不能な場合のみでなく、外科的切除後の術後補助療法としても使用が可能となる。

今回の承認は、BRAF V600E/K遺伝子変異を有する再発ハイリスク*の悪性黒色腫患者さんのうち、外科的切除後の患者さん870例(日本人患者5例を含む)を対象に実施した国際共同第Ⅲ相臨床試験(F2301試験、COMBI-AD:第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験)における有効性安全性の評価に基づいている。

この試験では、投与期間を12カ月として、「タフィンラー」(1回150mgを1日2回連日投与)と「メキニスト」(2mgを1日1回連日投与)を併用する群(併用療法群438例)とプラセボ群(432例)を比較。
無再発生存期間RFS)の解析では、プラセボ群と比較して、併用療法群では再発又は死亡のリスクを53%低下させ、統計学的に有意なRFSの延長が認められた[Kaplan-Meier法で推定したRFSの中央値:併用療法群未到達、プラセボ群16.6カ月、ハザード比0.47(95%信頼区間:0.39-0.58)、層別log-rank検定 p=1.53×10-14]1,2

F2301試験の有害事象は他の試験と一貫しており、安全性における新たな知見は報告されなかった1,2
タフィンラーおよびメキニストの併用投与を受けた患者さんで観察された主な副作用は、発熱(56.1%)、疲労(39.1%)、悪寒(35.6%)等であった1,2

* American Joint Committee on Cancer (AJCC) Melanoma of the Skin Staging version 7に基づく病期IIIa:リンパ節転移1mm超、Ⅲb、Ⅲc

悪性黒色腫について

悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚がんの一種であり、皮膚の色と関係するメラニンをつくるメラノサイト(色素細胞)やほくろの細胞(母斑細胞)が悪性化した腫瘍をさす。
悪性黒色腫は、悪性黒子型、表在拡大型、末端黒子型、結節型の4つに分類される3,4
悪性黒子型は顔面、頸部、手背等、日光に照射されやすい部位に発生することが多く、末端黒子型は足底、手掌や爪部に発生することが多いとされている。
一方で、表在拡大型や結節型は全身どこにでも発生する5

悪性黒色腫の日本国内の患者数は約4,000人6と推定され、日本人にとっては稀ながんである。
2015年の日本における皮膚がんによる死亡者数1,505人のうち、約40%(595人)が悪性黒色腫によるもので7、皮膚がんの中で最も悪性度が高いがんと言われている。

「タフィンラー®」「メキニスト®」併用療法について

BRAF阻害剤「タフィンラー」とMEK阻害剤「メキニスト」は、悪性黒色腫や非小細胞肺がんに関連するRAS/RAF/MEK/ERK経路のセリン・トレオニンキナーゼファミリーの異なるキナーゼ、BRAFおよびMEK1/2をそれぞれ標的とする1,2
「タフィンラー」と「メキニスト」を併用した場合、腫瘍の増殖速度をそれぞれ単剤で用いた場合より抑制することが明らかになっている。

「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、切除不能または転移性のBRAF V600E/K遺伝子変異陽性悪性黒色腫患者さんに対する治療薬として、米国、欧州、オーストラリア、チリ、カナダで承認されている。
また、2018年4月には、米国において、リンパ節への転移があるBRAF V600E/K遺伝子変異陽性の悪性黒色腫患者さんの術後補助療法として承認を取得している。
日本では、BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫を効能及び効果として、2016年3月に承認され、同年6月に発売された。
また、「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、BRAF V600遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんの治療薬として、米国では2017年6月に、欧州では2017年3月に、日本では2018年3月に承認されている。

「メキニスト」は、日本たばこ産業株式会社(JT)と京都府立医科大学 酒井敏行教授が共同で見出し、その後グラクソ・スミスクライン社によって開発された。
2015年、ノバルティスは、グラクソ・スミスクライン社のオンコロジー事業買収の一環として、全世界において「メキニスト」を開発、製造、販売する独占的な権利をJTより取得した。

参考文献
1.「タフィンラー」医薬品インタビューフォーム, 2018年6月改訂(第5版)
2. 「メキニスト」医薬品インタビューフォーム, 2018年6月改訂(第5版)
3. [Clark WH Jr, Elder DE, Van Horn M, et al. (1986)] The Biologic Forms of Malignant Melanoma. Hum Pathol;17:443-50.
4.[Clark WH Jr, From L, Bernardino EA, et al. (1969)] The Histogenesis and Biologic Behavior of Primary Human Malignant Melanomas of the Skin. Cancer Res; 29:705-27.
5.独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター 2017
6.独立行政法人統計センター 2015年
7.「がんの統計’16」公益財団法人がん研究振興財団

参照元:ノバルティス ファーマ株式会社プレスリリース

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