長期ストレスとがん罹患との関連について研究結果を発表-国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC Study)-


  • [公開日]2018.01.22
  • [最終更新日]2019.03.15

2018年1月20日、 国立研究開発法人国立がん研究センターは、40~69歳の男女約10万人について、1990年(または1993年)から2012年まで追跡調査し、自覚的ストレスの程度およびその変化とがん罹患との関連調査の研究結果を発表した。
追跡調査中にがんに罹患したのは17,161人で、長期的にみて、自覚的なストレスレベルが高いと、全がんで罹患リスクが高くなり、その関連は男性で強くみられる結果となった。また、罹患したがんを臓器別にみると、特に、肝がん・前立腺がんで自覚的ストレスが高いとリスクの上昇がみられた。

調査概要

調査対象

1990年に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部に在住か、1993年に茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内(呼称は2017年現在)在住者でがんではなかった方

対象者数

101,708人(男性:48,588人、女性53,120人)

調査項目

生活習慣に関するアンケート調査

長期間にわたる自覚的ストレスは全がん罹患のリスク上昇と関連

本研究の追跡調査中(平均17.8年)に、男女計17,161人のがん罹患が確認された。
調査開始時のアンケートの回答から、日常的に自覚するストレスの程度について3つのグループ(低、中、高)に分けて、その後の全がん罹患を比較、自覚的ストレスレベルが「低」のグループを基準とし、それ以外のグループのがんリスクを比較したところ、調査開始時の自覚的ストレスレベルと全がん罹患との間に統計学的有意な関連は見られなかった。

次に、対象者のうち、調査開始時と5年後調査時のアンケート両方の回答者(79,301人)について、自覚的ストレスに関する回答の組み合わせから、その変化を6つのグループ(常に低、常に低・中、常に中、高が低・中に変化、低・中が高に変化、常に高)に分け、がん罹患リスクとの関連を検討した結果、うち12,486人(男性7,607人、女性4,879)のがん罹患が確認され、常に自覚的ストレスレベルが高いグループは、常に自覚的ストレスレベルが低いグループに比べ、全がん罹患リスクが11%上昇していた。

図.自覚的ストレスレベルと全がん罹患リスク(男女計)

*調査開始時の年齢、地域、性別、心理的要因、BMI、喫煙状況、飲酒状況、職業、運動、同居の有無、野菜・果物摂取量、がん家族歴で調整。

ストレスとがん罹患はどう関係しているのか

本研究の結果から、長期的にみると、自覚的ストレスレベルが高ければ、全がん罹患リスクが高くなるという関連が認められた。

本研究では、男性で、この関連が強くみられ、全体の結果に影響を与えたと考えられる。この理由として、本研究の対象者のうち、常に高いストレスを受けていたのは主に男性であったこと、また、女性よりも男性の方がストレスに対する生理的影響が大きい可能性が考えられる。

また、ストレスレベルが高い男性は、喫煙や飲酒など、がんのリスク要因となる生活習慣をもつ傾向が強く、統計学的にこれらの影響は考慮したものの、完全に取り除くことはできなかった可能性がある。

臓器別でみると、特に、肝がん・前立腺がんで自覚的ストレスが高いとリスクの上昇がみられた。
ストレスががんを引き起こすメカニズムは良く分かっていないが、動物実験では、免疫機能の低下を通じて他の肝疾患を発症し、発がんに至ることが報告されていることから、肝がんは特にストレスの影響を受けやすい可能性が考えられる。

他部位のがんについては現在まで得られた知見が少なく、今後ストレスとがん罹患のメカニズムについて更なる検討を行うことが重要といえる。

参照元:国立がん研究センタープレスリリース

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