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前立腺がん ホルモン療法へのドセタキセル追加 生存期間22カ月延長 ASCO2015
[公開日] 2015.07.02[最終更新日] 2015.07.02
5月29日~6月2日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)にて、「ホルモン療法未治療の前立腺がん患者に対してホルモン療法にドセタキセル(商品名:タキソテール)を使用する第3相試験」の結果が英University of Warwick、Queen Elizabeth Hospital Birmingham(ウォリック大学、バーミンガムクイーンエリザベス病院)のNicholas David James氏によって発表されました。
なお、本試験は年次総会に先立ち5月13日にASCOが公表禁止制限付き報道会見されています。
通常、前立腺がんの治療は、ホルモン治療を実施して効果がなくなってからドセタキセルなどの抗がん剤治療を行いますが、James氏らは、有効な薬剤を早期に使用することにより、生存期間に大きな有用性をもたらす可能性があるという仮説をたてました。
よって、この試験はホルモン治療を実施していない進行前立腺がん患者に対し、「標準のホルモン治療(標準治療群:1184人)」または「標準のホルモン治療+ドセタキセル(+ドセタキセル群:592人)」にわけて治療した場合の効果と安全性を確認しています。
ポイントは以下の通りです。
1.生存期間の中央値は10カ月間延長した。(標準治療67カ月 vs +ドセタキセル群77カ月。統計学的にも証明されたp=0.003)
2.治療を開始した時点で転移を有する場合は更に高く、22カ月延長した。(標準治療群43カ月 vs +ドセタキセル群65カ月。統計学的にも証明されたp=0.002)
3.標準ホルモン治療にドセタキセルを加えることにより有害事象が増えたものの、副作用コントロールは可能であった。今後、QOL(クオリティーオブライフ)に関するデータが解析・公表される予定。
James氏は「新規に診断された転移性前立腺がん患者に対する治療として、患者の健康状態が治療に耐えうる場合は、ドセタキセルを使用するようになるであろうと期待している。また、転移がない場合でも、ドセタキセルの提案を検討してもよいかもしれない」と述べています。
なお、今回の試験は、2962人を対象に上記の2群に加え「標準ホルモン治療+ゾレドロン酸(商品名ゾレア)」と「標準ホルモン治療+ドセタキセル+ゾレドロン酸」を使用する計4つ群にわかれ実施していますが、ゾレドロン酸の上乗せ結果は認められていないことより、本記事では説明を省いています。
STAMPEDE Trial Website(試験専用WebサイトASCO2015スライド掲載 英語)
The ASCO PSOT(英語)
ASCO2015 Abstract(英語)
ASCO Press Release(英語)
この試験の情報:Clinical trials.gov(英語)
【前立腺がんの治療について】
前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けて発生・進行するホルモン依存性のがんです。よって、男性ホルモンがなければ増殖できません。この特徴を利用するのがホルモン療法となります。手術で精巣を除去することもありますが、一般には薬物にてホルモンを抑制します。
しかしながら、ホルモン治療が治療が効かなくなったり、ホルモン治療が終了後に再発・進行してしまうことがあります。これを去勢抵抗性といい、ドセタキセルやカバジタキセル(商品名ジェブダナ)のような細胞傷害性の抗がん剤やアビラテロン(商品名:ザイティガ)やエンザルタミドのような新しいタイプのホルモン治療が行われます。
【ASCO(あすこ)とは?】
American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)の略称で、世界最大のがん学会となります。年に1回開かれるこの会議では、世界中から約25,000人ものオンコロ ジストが参加され、5000以上にのぼる研究結果が発表されます。
【参考(上記試験の転移がある場合の違い)】
記事:可知 健太
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