2020年12月15日、ファイザー株式会社は抗悪性腫瘍薬、第三世代ALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害剤であるローブレナ錠25mg、同100mg(一般名:ロルラチニブ、以下ローブレナ)の適応拡大の承認申請を行った。
ローブレナは、他のALK阻害剤に抵抗性を示す変異性の腫瘍に対しても効果を発揮できるよう、耐性メカニズムに注目し、創製された。また、血液脳関門を通過できるように設計されている点も特徴である。既に2018年9月にALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性または不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんで製造販売承認を取得した。
今回の申請は、国際共同第3相CROWN試験(NCT03052608)の結果に基づくもの。CROWN試験はALK陽性転移性非小細胞肺がん(NSCLC)に対してファーストライン治療薬としてローブレナとザーコリを比較検証した試験。中間解析にて無増悪生存期間を延長し、病勢進行または死亡のリスクを72%低下させ、高い頭蓋内抗腫瘍効果を認めた。23カ国が参加し、内訳は日本の患者が最も多かった。
今回の申請が承認されると、これまでのALK肺がんに対するセカンドライン治療に加え、ファーストライン治療薬としても同剤を使用できるようになる。
ファイザー社社長の石橋太郎氏は「ALK肺がん治療は、2012年のザーコリの発売以降、国内ではローブレナを含め合計3剤のALK阻害剤が上市され、治療選択肢が広がっています。一方で、脳転移による増悪や遺伝子の耐性変異により効果が得られなくなるといった治療上の課題が存在しています。一日でも早く、新たな治療選択肢を必要とする日本の未治療ALK肺がん患者さんにお届けできるよう、承認取得に向けて関係各位と緊密に協業してまいります」と述べている。
ALK陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)について 肺がんは、がん死亡の原因がん腫で世界1位である。NSCLCは肺がん症例の約85%を占め、NSCLC患者の約75%が転移後もしくは進行後に肺がんと診断される。 ALK陽性進行NSCLCは、NSCLCの3~5%で認められ、特に若年者や非喫煙者に多い。近年、ALK融合遺伝子変異をターゲットとした分子標的薬としてザーコリを筆頭に3製剤が登場し、治療成績は各段に向上したが、脳転移に伴う疾患進行や耐性変異の出現は、依然として治療上の喫緊の課題となっている。
参照元:ファイザー株式会社 プレスリリース