ALK-TKIアルンブリグなどがん関連4製剤の承認了承、報告事項3製品も厚労省薬食審医薬品第二部会にて


  • [公開日]2020.12.10
  • [最終更新日]2020.12.10

12月4日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、審議項目として新薬8製品の審議を行った。このうち抗がん剤関連は4製品。また、報告事項として4製品を報告し、抗がん剤関連は3製品であった。

報告事項:医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階において、承認して差し支えないとされ、部会では審議せず報告のみでいいと判断されたもの。

審議品目

アルンブリグ錠30mg、同錠90mg(一般名:ブリグチニブ)※新規

製造元:武田薬品
効能・効果:ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん

選択的にALKを阻害する次世代のチロシンキナーゼ阻害薬(ALK-TKI)。ALKのリン酸化を阻害し、ALK融合遺伝子陽性の腫瘍が増殖するのを抑える。非小細胞肺がんに対して1次治療から使用可能。

リムパーザ錠100mg、同錠150mg(一般名:オラパリブ)※一部変更

製造元:アストラゼネカ
効能・効果:BRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法
※今回追加分の適応のみ記載

ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬のリムパーザは、BRCA1/BRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞または腫瘍におけるDNA損傷応答(DDR)を阻害する。PARP阻害作用によりDNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製の停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こし、がん細胞を死滅させる。

今回適応追加となった膵がんは、白金系抗がん剤を含む一次化学療法後、疾患進行が認められないBRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する膵がんであり、これらに対する標準治療ない。

マブキャンパス点滴静注30mg(一般名:アレムツズマブ(遺伝子組換え))※一部変更

製造元:サノフィ
効能・効果:同種造血幹細胞移植の前治療
※今回追加分の適応のみ記載

マブキャンパスは慢性リンパ性白血病細胞やヒトの免疫細胞(B細胞、T細胞NK細胞など)の表面に発現するCD52と結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性や補体依存性細胞傷害(CDC)活性を誘導することで増殖抑制作用を示すと考えられている、抗CD52モノクローナル抗体

2018年の同種造血幹細胞移植(HSCT)の件数は3642件であり、追加適応の患者数は推定3600人。

ガーダシル水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来))※一部変更

製造元:MSD
効能・効果:ヒトパピローマウイルス6、11、16および18型の感染に起因する以下の疾患の予防

  • 肛門がん(扁平上皮がん)及びその前駆病変(肛門上皮内腫瘍(AIN)1、2及び3)

※今回追加分の適応のみ記載

4価の組換えヒトパピローマウイルス(HPV)6、11、16および18型L1タンパク質ウイルス様粒子(VLP)からなる無菌の懸濁液。L1タンパク質は遺伝子組換え技術で得られた酵母を培養して製造され、自己集合によりVLPを構築する。各型のVLPは精製後、アルミニウムを含有するアジュバント(アルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩)に吸着させ、緩衝液と混合、製剤化して同剤となる。

今回、用法・用量の「9歳以上の女性」が「9歳以上の者」に修正されたことで、男性も適応となった。男女ともに3回接種で用いるが、男性の定期接種については厚生労働省の厚生科学審議会で議論される。

報告品目

テセントリク点滴静注1200mg(一般名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え))※一部変更

製造元:中外製薬
効能・効果:切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、進展型小細胞肺がん、切除不能な肝細胞がん(変更なし)

PD-L1という細胞表面のたんぱく質と結合し、その働きを抑える抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体。がん細胞は免疫細胞からの攻撃をかわすため、PD-L1を細胞表面に発現し、免疫細胞が発現するPD-1と結合する。テセントリクは、がん細胞のPD-L1と結合することで免疫細胞の働きを促進し、がん細胞を攻撃する。

今回、用法・用量の項に「化学療法未治療のPD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」が追加された。これによりPD-L1陽性の場合、1次治療として単剤投与が可能となり、抗PD-1抗体薬のキイトルーダと同様の位置づけとなった。

リムパーザ錠100mg、同錠150mg(一般名:オラパリブ)※一部変更

製造元:アストラゼネカ
効能・効果:相同組換え修復欠損を有する卵巣がんにおけるベバシズマブ(遺伝子組換え)を含む初回化学療法後の維持療法、BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん
※今回追加分の適応のみ記載

一次治療での化学療法で奏効が維持されている相同組換え修復欠損を有する卵巣がんに対し、ベバシズマブとの併用が可能となった。卵巣がんの約半数が相同組換え修復欠損を有するとされており、患者数は推定1万2500人。

また今回、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対する適応も追加された。同疾患に対する適応は、アビラテロンもしくはエンザルタミドまたはその両剤の治療歴を有するBRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する患者が対象。国内における2017年の前立腺がんの総患者数は約197,000人。

リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg(一般名:リツキシマブ(遺伝子組換え))※一部変更

製造元:全薬工業
効能・効果:CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫等(変更なし)

B細胞表面に長期間発現するCD20に選択的に結合する抗CD20モノクローナル抗体薬であり、分子標的治療薬の1種。悪性リンパ腫の中では、B細胞表面にはCDという表面抗原が多く出現するが、リツキシマブはCD20と結合することで、ヒトの免疫応答を活性化して腫瘍化したBリンパ球を攻撃し、B細胞リンパ腫に効果を発揮する。B細胞リンパ腫は悪性リンパ腫の約70%を占める。

現在、同剤は用時生理食塩液または5%ブドウ糖注射液で10倍に希釈調整するが、今回、この希釈方法の「10倍」の部分を削除し、「1~4mg/mL」と変更する。これにより、90分間投与を可能とする。

参照元:
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)

×

リサーチのお願い


この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン