この記事の3つのポイント
・RET遺伝子変異陽性の甲状腺髄様がんを対象とした第3相のLIBRETTO-531試験
・一次治療としてのRET阻害剤であるセルペルカチニブ単剤療法の有効性、安全性を検証
・セルペルカチニブにより無増悪生存期間が有意に延長
2023年10月20~24日、スペイン・マドリードで開催されているESMO(欧州臨床腫瘍学会)にてRET遺伝子変異陽性の甲状腺髄様癌(MTC)患者に対するファーストライン治療としてのRET阻害剤であるセルペルカチニブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のLIBRETTO-531試験の結果がJulien Hadoux氏らにより公表された。
LIBRETTO-531試験は、RET遺伝子変異陽性の甲状腺髄様がん(MTC)(N=291人)に対して1日2回セルペルカチニブ(製品名:レットヴィモ)160mg単剤療法を投与する群、もしくは主治医選択のマルチキナーゼ阻害薬(カボザンチニブ、バンデタニブ)を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した第III相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値12ヶ月時点における結果、主要評価項目であるPFSの中央値はセルペルカチニブ単剤群未到達に対して主治医選択のマルチキナーゼ阻害薬群16.8ヶ月、主治医選択のマルチキナーゼ阻害薬群に比べてセルペルカチニブ単剤群で病勢進行または死亡のリスクを統計学的有意に改善した(HR:0.28,95%信頼区間:0.165-0.475,p<0.0001)。
副次評価項目であるORRは、セルペルカチニブ群の69.4%に対して主治医選択のマルチキナーゼ阻害薬群で38.8%を示した。フォローアップ期間中央値15ヵ月時点におけるOSも主治医選択のマルチキナーゼ阻害薬群に比べてセルペルカチニブ単剤群で改善傾向を示した(HR:0.374,95%信頼区間:0.147-0.949,p=0.0312)。
治療中に減量が必要となった症例は、セルペルカチニブ群の38.9%に対してカボザンチニブで79.2%、バンデタニブで72.0%を示した。有害事象(AE)による治療中止率はセルペルカチニブ群の4.7%に対して主治医選択のマルチキナーゼ阻害薬群で26.8%を示した。
以上のLIBRETTO-531試験の結果よりJulien Hadoux氏らは「RET遺伝子変異陽性の甲状腺髄様がんに対してRET阻害剤セルペルカチニブ単剤療法は無増悪生存期間を統計学的有意に改善し、安全性シグナルも他のマルチキナーゼ阻害薬に比べて良好でした。セルペルカチニブは本疾患の第一選択薬として期待される」と結論付けている。
参照元:Hadoux J, et al. Randomized phase 3 study of selpercatinib versus cabozantinib or vandetanib in advanced, kinase inhibitor-naïve, RET-mutant medullary thyroid cancer. ESMO Congress 2023, LBA3