10月27日、小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は、オプジーボ(一般名:ニボルマブ、以下オプジーボ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ、以下ヤーボイ)の併用療法について、切除不能な進行/再発の悪性胸膜中皮腫の適応拡大承認を申請したと発表した。
悪性胸膜中皮腫は、胸腔表面を覆う中皮やその下の結合組織の未分化な間葉細胞に由来する悪性腫瘍であり、発症原因は石綿(アスベスト)との関連が強いと言われている。発症までの期間は長く、石綿曝露から約30~50年後であることが多い。国内において約2,000人の患者がいると推定されている。
今回の承認申請は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に実施した多施設国際共同無作為化非盲検第3相臨床試験であるCheckMate-743試験の中間解析の結果に基づいている。同試験では、オプジーボ+ヤーボイ併用療法と標準治療の化学療法であるペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン併用療法を比較検討した。その結果、オプジーボとヤーボイの併用療法は、化学療法に対して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示した。また、本試験で認められたオプジーボとヤーボイの併用療法の安全性プロファイルは、併用療法におけるこれまでの結果と一致していた。
現在、悪性胸膜中皮腫に対する初回薬物治療としては、ペメトレキセド+シスプラチン併用療法であるが、今回の申請により、オプジーボ+ヤーボイ併用療法が新たな治療選択肢の一つとなるものと期待されている。
オプジーボとは オプジーボは免疫チェックポイント阻害薬の一種であり、programmed cell death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1阻害薬。オプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得したから複数のがん腫において重要な治療選択肢となっている。現在食道胃接合部がん、小細胞肺がん、肝細胞がん、膠芽腫、尿路上皮がん、卵巣がん、膀胱がん、膵がん、胆道がんなどを対象に臨床試験が行われている。
ヤーボイとは ヤーボイは、T細胞の活性化を抑制する調節因子である細胞傷害性T リンパ球抗原-4(CTLA-4)に結合するヒトモノクローナル抗体。ヤーボイはCTLA-4 と結合し、CTLA-4 とそのリガンドであるCD80/CD86 との相互作用を阻害する。それにより腫瘍浸潤エフェクターT 細胞の活性化と増殖など、T 細胞の活性化と増殖が促される。また、CTLA-4 のシグナル伝達が阻害されると、制御性T 細胞の機能が低下し、抗腫瘍免疫応答を含むT 細胞の反応性が向上する可能性が示唆されている。
CheckMate-743試験とは 未治療の悪性胸膜中皮腫患者(N=605人)をオプジーボ+ヤーボイ併用療法群(N=303人)と化学療法群(N=302人)に割り付け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)を評価した第3相試験。オプジーボ+ヤーボイ併用療法群には2週間ごとにオプジーボ3mg/kg、6週間ごとにヤーボイ1mg/kgを投与し、化学療法群には21日間を1サイクルとしてシスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC5とペメトレキセド500mg/m2を投与した。
参照元:小野薬品工業株式会社 ニュースリリース